“発覚免脱罪”とは!? その概要と適用事例・判例を解説します!

発覚免脱罪

最近まで私自身も全く知らなかったのだが、“発覚免脱罪”と聞いてこれがどのような罪を言うのかをご存知だろうか。

今回はその概要と過去の適用事例・判例について投稿するので、ぜひ最後までお読みいただきたいと思う。

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概要

発覚免脱罪とは、飲酒運転又は薬物運転により人身事故を起こした者が運転時のアルコール、あるいは薬物の影響が発覚することを免れようとする行為を言う。

具体的には、①現場を離れることで体内に保有するアルコールや薬物濃度を減少させる行為、②運転時にそれらを摂取していたことの立証を困難にする目的で事故後さらにアルコール又は薬物を摂取する行為などがこれに該当する。

この発覚免脱罪は、平成26年5月20日に施行された“自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律”において新たに規定され、いわゆる逃げ得対策として導入された経緯を持つ。

“逃げ得”とは、事故を起こした当事者が現場を離れることで飲酒運転や薬物運転の立証を困難にし、最も重い罰則が設けられる“危険運転致死傷罪”の適用を免れてしまうことを言うが、これが法律の抜け穴を利用した卑劣極まりない行為であることを考えれば、新たに発覚免脱罪が設けられたのも当然のことなのだ。

罰則

発覚免脱罪に対する罰則は、12年以下の懲役と厳しいものである。

さらに、“救護義務違反”、いわゆる“ひき逃げ”との間に併合罪が成立する可能性もあり、その場合は、被告に対して最大18年の懲役を課すことが可能だ。

これは、“自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律”の中でも“危険運転致死傷罪”に次いで厳格なものであるが、事の重大性からして妥当と思われる。

適用事例と判例

ここで発覚免脱罪で有罪判決が下された事例を紹介したいが、今回ご紹介するものについては懲役1~2年、執行猶予3年の量刑が課せられている。

・平成27年1月30日福井地方裁判所判決

事件の概要判決
交差点で接触事故を起こして相手車両の女性3人を負傷させた被疑者が、飲酒運転の発覚を免れるため逃走懲役2年、執行猶予3年

・平成26年12月10日横浜地方裁判所判決

事件の概要判決
酒を飲んで運転していた被告人が停止中のトラックに衝突、トラックの男性に胸骨骨折の重傷を負わせたが、飲酒運転の発覚を免れるため逃亡懲役1年6ヶ月、執行猶予3年

事の重大性、悪質性を考慮すれば刑が軽過ぎる感は否めないものの、いずれも死亡者が出ていないことがその理由と考えてよいはず。

仮にも人を死亡させたとなれば、その量刑がより厳しくなることは確実である。

問題点

“逃げ得”を許さないために設けられた発覚免脱罪であるが、問題点が全くないわけではない。

と言うのも、この罪の適用が検討されるのは検挙前に当事者が現場を逃走するなどして体内のアルコール濃度が誤魔化されている状況であり、当該人物が飲酒運転をしていたことや、逃走等の行為が飲酒の発覚を免れるために行われたことを証明するのが困難なケースもあるのだ。

例えば後日確保された被疑者が単に“怖くなって逃げた”と主張する場合、検察は被疑者が事故を起こす直前に飲酒していた事実を立証しない限りこの発覚免脱罪を適用できず、公判を経て下されるのは救護義務違反を根拠とする懲役5年程度の量刑にとどまることが予想される。

もちろん、事件前に被疑者が居酒屋で飲酒していた証拠が確立された場合などは発覚免脱罪が適用される蓋然性が圧倒的に高まるだろうが、“抜け道が完全に塞がれた”と言えるかと聞かれれば必ずしもそうではないと思う。

なお、事故現場で当事者が逮捕され体内からアルコールが検出された場合は、その事実を持って“酩酊運転致死傷”又は“準酩酊運転致死傷”を根拠に危険運転致死傷罪を適用することが可能である。

終わりに

発覚免脱罪についてご理解いただけただろうか。

全てが飲酒運転に起因する悪質な行為だけに、本投稿を書きながらも、“飲んだら乗らない”を実践することの大切さを再確認しているところである。

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