車検証の所有者欄にディーラーの名前が記載されており驚いたと言う声を聞くが、一体どのようなわけがあるのだろうか。
今回は、その理由と所有権留保について投稿したい。
ローン契約
車の所有者がディーラー名義になる理由は、ローン契約で車を購入することにある。
詳しくは後で述べるが、ユーザーが残りの債務を完済するまで、車の所有権をディーラーのものにしておく措置と考えればよい。
つまるところ、万が一の債務不履行に備えて車を担保にしているのだ。
なお、ディーラー系列のクレジット会社がローンに関係することもあるらしく、その場合は、所有者がそちらの名義になるらしい。
言うまでもなく、ローンではなく一括支払いで車を購入する場合には、所有者がディーラーやクレジット会社になることは、まずはあり得ない。
所有権留保
所有者がディーラー名義になる根拠には、“所有権留保”と言う考え方がある。
これは、代金が完済されるまでの間、引き渡しを終えた目的物の所有権を留保する措置のことを言う。
もちろん、その目的は売買金の確実な回収であり、車が担保になる仕組みだ。
使用・収益・処分
民法上、所有権は、具体的には、①使用、②収益、③処分をする権利と規定されている。
対象物が自動車の場合、使用は車に乗ること、収益は車を他人に貸して利益を得ること、処分は車を売却することを言う。
ローン契約で自動車を購入した場合、車の所有権を持つのはディーラーまたはクレジット会社だが、①の車を使用する権利は購入者のものになるらしい。
よって、購入者は自由にその車に乗ることができるのだ。
一方、②収益と③処分の権利はディーラーが持つため、ユーザーがその車を他人に貸し出して利益を出したり、勝手に車を処分することは不可能である。
ユーザーがその車を売却する場合は、残りの債務を完済した上で所有権を自身に移行する必要があるので、結局ディーラーに相談することに。
ディーラーにとっては、返済の話を含め、再び自社の車を購入させるべく交渉する機会を得るわけで、都合の良い仕組みなのかもしれない・・・。
留保の解除
所有権留保を解除するには債務を完済していることが条件となるが、返済が完了した段階で、ディーラーまたはクレジット会社に完済証明書を発行してもらう必要がある。
その後、その他の必要書類などを揃え、使用の本拠地を管轄する運輸支局で申請手続きをする流れだ。
用意すべき書類等は、以下の通り。
- 車検証
- 車庫証明
- 完済証明書
- 譲渡証明書(旧所有者の捺印が必要)
- 印鑑証明(旧所有者のものと新所有者のもの)
- 旧所有者からの委任状
- 印鑑
- 申請書
- 手数料納付書
注意点
返済が終わった時点で、確実に所有権留保の解除手続きをすることが大事である。
例えば、車を購入したディーラーやクレジット会社が倒産した場合など、それらの会社の資産として、自身の車を差し押さえられる可能性もゼロではないからだ。
すでにローンを完済しているのだからそれはおかしいと思われるかもしれないが、相手が高圧的態度に出てくるような場合には厄介なことに・・・。
後々トラブルが発生するリスクを少しでも減らすためにも、しっかりと解除手続きを行うようにしよう。
また、決して多くはないが、一括払いで車を購入したにも関わらず所有者がディーラー名義にされたと言うケースも報告されている。
法律的にもおかしいことだし、間違いなく悪意に満ちた行為であるから、万が一そのようなことがあれば直ちに抗議することが大切だ。
その後は、そのような業者とは関わらないようにしよう。
終わりに
所有権留保について、ご理解いただけただろうか。
車を購入する場合、何かとディーラーや業者任せにすることが多いと思うが、後々のトラブルを避けるためにも、しっかりと名義を確認するようにしよう。
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