反則点数の累積が15点に達した運転者に免許の取消処分が課せられることはご周知の通りであるが、“嘆願書”なるものを提出することで処分が軽減される可能性があるらしい。
にわかには信じ難い話ではあるものの、今回はその書き方と効果について投稿する。
嘆願書とは
その名の通り、相手に願いを請うために作成する文書を嘆願書と言う。
これに似たものとして“上申書”があるが、いずれも法的な手続きによらず単に申し立てを行う文書であることが特徴だ。
今回採り上げるのは運転免許の取消し処分に対して作成される嘆願書であるから、文書の趣旨は当然ながら処分の軽減の嘆願である。
提出方法
90日以上の免許の停止処分、免許の取消処分の対象者は、処分が行われる前に“意見の聴取”に臨むことができる。
これは、行政が当該処分を受ける予定の運転者の意見を聞き、規定通りの処分を下すか否かを最終決定するために設けられるものであり、当事者にとってみれば自身の意見を述べることができる貴重な機会でもあるのだ。
嘆願書の提出もこの場で行うことになるため、処分の軽減を臨むのであれば確実に出席したいところであるが、自身の代わりに弁護人や代理人を出頭させることも可能である。
書き方
嘆願書を作成するにあたり、書き方に特別の決まりが存在するわけではない。
よって規定のフォーマットに従う必要もなく、手書きでも印刷でも構わないが、宛名や日付、題名など、最低限の体裁が整った文書の作成を心掛ければ十分である。
何よりも重要なのが文書を通じて自身の過失を認めて反省の意を表明することであり、自身の行いの何が悪かったか、今後同じ過ちを起こさないためにどうするのかを記載した“反省文”を作成すると考えればよいだろう。
一方、“取り締まりをした警官がおかしい”などと主張し事実の否認を行うことは場違いだし、反省していないと判断されれば処分の軽減などあり得ないので注意が必要だ。
免許の取消が人身事故による加点に起因するのであればまだしも、交通違反を犯した当事者の責任は重く、見苦しい言い訳が相手に悪い印象を与えることは言うまでもない話である。
効果
この嘆願書の効果がどれほどのものなのか、多くの方の最大の関心はこの点にあると思うが、法的根拠に基づく正式な手続きでないこともあり、やはりこれを提出したからと言って処分の軽減が約束されるものではない。
そもそも、反則点数はじめ、我が国の道路交通に対する行政処分が事細かに定められたルールのもと実践されていることを考えれば、法的根拠を持たない書面によりその規定が覆されるようなことがあってよいはずがなく、当然と言えば当然なのだが…。
しかしながら、欠格期間1年付きの免許取消処分が180日間の免許停止処分に、同じく2年間の欠格期間が1年間に短縮されるなど、実際に処分が軽減された事例も存在するため、全く効果がないわけでもないようだ。
また、この嘆願書による処分の軽減は免許の取消処分の他、免許の停止処分に適用された事例もある。
・嘆願書による処分軽減の例
本来の処分 | ⇨ | 軽減後の処分 |
免許取消+欠格期間1年間 | 免許停止180日 | |
免許取消+欠格期間2年間 | 免許取消+欠格期間1年間 | |
免許取消+欠格期間3年間 | 免許取消+欠格期間2年間 | |
免許停止30日 | 処分猶予 | |
免許停止60日 | 免許停止30日 | |
免許停止120日 | 免許停止90日 |
留意点
免許取消しの処分が軽減される可能性があるとは言え、はじめからこの嘆願書ありきで物事を考えるのは言語道断である。
違反や事故など、取消処分は自身が犯した過失に起因するに他ならず、法律により定められた正規の処分を受けるのは至極当然のこと。
それを真摯に反省することなしには嘆願書も反省文も意味を持たないだろうし、実際に処分が軽減されることもないはずだ。
嘆願書の作成をお考えの方には、何よりも自身の非を認め、確かな反省と今後絶対に同じ過ちを繰り返さないと言う決意を持った上で行動していただきたいと思うところである。
終わりに
今回は、免許の取消処分に対する嘆願書の書き方と効果について投稿してきた。
そもそも、免許の取消処分は余程のことがない限り適用されず、悪質な交通違反や人身事故など運転者の過失に起因するものに他ならないことを考えれば、自身の非を認めた上での確実な反省がなされて初めて、この嘆願書が一定の意味を持つのだと思う。
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