最近、万が一の場合に備え自動車にドライブレコーダーを搭載する人が増えているようだが、1つ疑問が湧いてきてしまった。
それには一般の人も写ってしまうわけだが、肖像権の侵害にはならないのだろうか。
はじめに
はじめに、ドライブレコーダーと車載カメラの違いを確認しておきたい。
ドライブレコダーの場合は、メモリーカードなどの記録媒体の容量が一杯になると、古いデータの上に新たな映像が上書きされる。
中には、事故などにより車が衝撃を受けた場合、そこから遡って数秒間の映像を自動的に保存してくれるタイプのものもあるらしい。
いずれにせよ、あくまでも運転中にトラブルが発生した場合の証拠映像の確保を最大の目的としているわけで、何も起こらなければ不必要な記録は消去されることになる。
一方、車載カメラと呼ばれるタイプは、記録媒体が一杯になった時点で録画が終了する場合が多いらしい。
そのデータを消去する、しないは所有者の判断によると言えるかもしれない。
もちろん、両者に共通する機能も多く、車載カメラの設定次第ではドライブレコーダーのように、容量が一杯になった時点で上書きされるようにすることも可能であるようだ。
肖像権の侵害
結論から言えば、ドライブレコーダー等の機器を用いて運転中の前方の様子を記録したからといって肖像権の侵害に該当することはない。
肖像権やプライバシー権は、その根拠が明確に法律化されているわけではなく、その侵害に当たるかどうかの判断は一般人にとって難しいことは事実である。
しかしながら、“他人の権利を侵害するかどうか”が大きなポイントになるようだ。
こうして考えると、万が一の場合に備え運転中の前方の様子を録画することが、他人の権利の侵害と何ら関わりがないことをご理解いただけると思う。
単に走行中の映像を記録しただけで、他人の権利が侵害されることはあり得ないからだ。
ドライブレコーダーであろうが車載カメラであろうが、公道を走行中に前方の映像を録画すること自体に問題はないのである。
注意点
映像を撮ること自体に問題がないと言ってしまうと、いわゆる“盗撮”と呼ばれる行為も合法であるように思えてしまうかもしれないが、そうではない。
これは、各都道府県の迷惑行為防止条例において、明確に禁じられている。
(卑わいな行為の禁止)
何人も、公共の場所又は公共の乗り物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
1 衣服その他の身に着けるもの(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
2 人の下着又は身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
3 人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を向け、若しくは設置すること。
4 前3号に掲げるもののほか、卑猥な言動をすること。
宮城県迷惑防止条例第3条の2より
改めて言うまでもないことではあるが、これらの行為は、絶対に許されるものではないのだ。
また、今回は、あくまでも“公道での走行中の映像の撮影”の話であり、個人の住宅等に侵入して撮影を行えば、“住居侵入罪”に問われる可能性があることも確認しておきたい。
動画サイトへの投稿
ドライブレコーダーで走行中の様子を録画すること自体に違法性はないが、映像の扱いによっては肖像権の侵害となる場合がある。
実際に、車載カメラの映像をユーチューブに投稿している人もいるが、そこには車両のナンバーはもちろん、人物が映っていることも珍しくない。
その動画の内容が、そこに映る個人や車両の持ち主が特定され、彼らが何かしらの不利益を被るものであれば、肖像権ないしプライバシーの侵害に該当する可能性があるらしいのだ。
具体的には、映像を通して、“そこに映る車両の所有者を公表する”、“登場する人物の名前や住所、職場などを公表する”、などの行為がそれに該当するのではないかと思う。
同時に、これらが、“万が一の場合の証拠の確保”と言うドライブレコーダーの本来の目的を逸脱していることも事実である。
とはいえ、先述の迷惑行為禁止条例のようにこれを明確に禁止する法律は存在ぜず、その動画に映る人の人権が侵害されるようなケースも決して多くはない。
さらには、その映像を見た人が自分が映っていることを肖像権の侵害だと訴えでもしない限りは何事にも発展しないことも事実だ。
以上のことからも、動画投稿サイトへの車載カメラの映像の投稿については、少なくとも現時点では大きな問題はないと言えるだろう。
終わりに
ドライブレコーダーや車載カメラで映像を撮影し、動画をネット上へ投稿することには問題がないことがわかった。
しかしながら、“万が一の場合の証拠の確保”と言う本来の目的を逸脱することなく、他人に不快な思いをさせることがないようにして欲しいと思うところである。
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