新燃費表示のWLTCモードを解説! JC08モードとの違いは!?

WLTCモードとは

現在、我が国ではJC08モードにより自動車の燃費性能が測定されているが、来年より新たな計測方法が導入されることをご存知だろうか。

今回は、その新方式“WLTCモード”について解説する。

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WLTCモード

WLTCモードは国際的に認められている自動車の燃費性能の試験方法であり、我が国では現在採用される“JC08モード”に変わる燃費計測方法として新たに導入されることが決定している。

このWLTCモードは①Low、②Medium、③High、④Extra Highの4つの走行条件により構成され、これらを平均的な使用時間に配分して試験が行われるが、WLTCモードの他に4条件ごとの測定結果も算出されることが最大の特徴だ。

4つの計測モードを具体的に説明すると、Lowは市街地、Mediumは郊外、Highは最高速度が比較的遅めに設定されている高速道路、Exrta Highは欧州の一般的な高速道路の走行に相当するが、Extra Highについては法定最高速度を超えてしまうため、日本で採用されるのはLow=市街地、Medium=郊外、High=高速道路の3つのみである。

ちなみに、“WLTC”は“Worldwide harmonized Light duty driving Test Procedure”の略であり、今回の試みが日本独自の燃費測定方法であるJC08モードから全世界共通の測定方法へのシフトを図るものであると考えてよいだろう。

切り替え時期

JC08モードからWLTCモードでの燃費表記に完全に切り替わるタイミングは2018年10月

よって各メーカーがそれに向けた準備を進めているが、一足早くマツダがCX-3のガソリン車にWLTCモードでの燃費表示を採用しており、JC08モードよりも厳しい数値が算出されるであろうWLTCモードを敢えて他社に先行して導入する姿勢からは、自社エンジン技術に対する彼らの自信の表れを知ることができる。

表示方法

※ 画像は国土交通省発表“燃費の表示内容が変わります”より引用。

上の画像はWLTCモードでの燃費表示例であるが、WLTCモード燃費が大きく表示されるのと同時に、①市街地、②郊外、③高速道路の各条件下での燃費性能もしっかり表記されている。

実燃費との差異

※ 画像はマツダさんHP“CX-3販促ページ”より引用。

上の画像は一足早くWLTCモードを導入したマツダCX-3ガソリン車の燃費表記であるが、同時に現行のJC08モードでの燃費性能も表示しており、その数字だけを見ると両者の測定結果に大きな差はない様にも思える。

従来JC08モードでの表示燃費と実燃費との乖離が問題視されてきただけに、WLTCモードでの測定結果がJC08モードと大差ないとなれば本末転倒と言わざるを得ないのだが、WLTCモードでは全条件下でコールドスタートが採用されること、アイドリングストップの時間が減少することなどを考慮すれば、やはりJC08モードで測定するよりも実燃費に近い結果が出ると考えて間違いないはず。

これはあくまでも私の想像の域を出ないものの、燃費の改ざんを行う残念なメーカーが存在する中、正攻法を貫き通すことができたマツダのエンジンだからこそこの様な結果に落ち着いているのであり、今後WLTCモードでの燃費表示を行うにあたりJC08モードでの測定結果と比較して大きく数字を落とす車種もあるのではないだろうか。

JC08モードとの違い

WLTCモードでは市街地、郊外、高速道路の3条件ごとの測定結果が表示される他、コールドスタートの採用、走行速度の上昇、アイドリングストップ時間の短縮など、JC08モードとの違いは多い。

 WLTCモード JC08モード 
平均車速36.57km/h24.4km/h
最高速度97.4km/h81.6km/h
走行距離15.01km8.172km
運転時間24分37秒20分4秒

特に注目したいのがエンジンが冷えた状態からテストを開始する“コールドスタート”の採用であるが、JC08モードではホットスタートとコールドスタートの両条件で測定が行われ、それぞれの比率を“3:1”として最終的な燃費が算出されるのに対し、WLTCモードでは全ての試験がコールドスタートで行われるため、エンジンの性能がより厳しくチェックされることになる。

また、テスト中の走行速度の上昇とアイドリングストップ時間の短縮が停止時及び低速走行時にエンジンを切ることで燃料を節約するハイブリッド車や軽自動車にとっては不利な条件であり、さらに走行距離がJC08モードの約2倍に伸びることからも、WLTCモードでは車の基本である走行時のエンジン性能がより大きく問われると言ってよいだろう。

JC08モードとの違い
  • 平均速度の上昇
  • 走行距離、走行時間の増加
  • コールドスタートの採用
  • アイドリングストップ時間の短縮

ハイブリッド車への影響

ハイブリッド車両は低速走行時や停止時にエンジンを停止させることで大きく燃費を稼ぐことが特徴だが、走行速度が高まることに加えてアイドリングストップの時間が短縮されるWLTCモードとの相性は決して良いとは言えず、JC08モード時と比較して大きく数値を落とす可能性がある。

現在WLTCモードでの計測結果を公表しているのはマツダ・CX-3(ガソリン車)のみであり、プリウス等の代表的なハイブリッド車両はこぞってJC08モードでの燃費表示を堅持しているものの、 来年には完全にWLTCモード表記に移行しなければならないわけで、メーカーにとっては決して歓迎できる話ではないはずだ。

特にプリウスをはじめとするハイブリッド車両はカタログ燃費と実燃費との差が大きく、これが原因でトラブルになる事例も報告されているので、WLTCモードの導入によってより実燃費に近い数値が掲示され、私たち消費者に正確な情報が伝わることを期待したいと思う。

終わりに

新たな燃費計測方法“WLTCモード”についてご理解いただけただろうか。

現行のJC08モードよりも厳しい条件下での測定により実燃費との乖離が減少することを期待するとともに、現在燃費が良いと言われる車種が新方式のもとでどれほどの燃費性能を提示できるのか、非常に楽しみである。

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