“物損事故を起こしても反則点数の加算や刑事罰を受けることがない”、“ゴールド免許が維持される”と言う人がいるが本当だろうか。
そこで今回は、物損事故を起こした場合の処分について投稿したい。
はじめに
はじめに、交通事故が①人身事故と②物損事故に分類されることを確認しておきたい。
改めて説明するまでもないと思うが、人が死傷した場合には人身事故、人の死傷がなく器物の損壊のみであれば物損事故に該当する。
一言で事故と言っても、両者の間には当事者が受ける処分の違いがあるので、それぞれについて個別的に見ていく必要があるのだ。
点数
結論から言えば、“物損事故では反則点数の加算がなされない”と言う意見は正しい。
物損事故に対する反則点数が設けられているわけでもなく、点数が加算される根拠が見当たらないのだ。
ただし、運転者が安全運転の義務を怠ったと判断された場合には、“安全運転義務違反”に問われる可能性がゼロではないと思う。
その辺りは現場検証を経ての警察官の判断によるところが大きいかもしれない。
(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
道路交通法第70条より
ゴールド免許への影響
反則点数が加算されないと言うことは、事故や違反を犯していないことを意味する。
よって、運転免許の停止や取消処分と言った行政処分を受けることもなければ、ゴールド免許が他の色の免許証に変わってしまうこともない。
刑罰
物損事故は刑事事件として処理されないため、罰則を受けることもない。
安全運転義務違反については道路交通法に罰則が規定されているが、反則金を納付することで刑事処分を免れることが可能。
よって、懲役や禁固刑はもちろんのこと、罰金刑に処せられる可能性すらないのだ。
とは言え、一歩間違えば人に危害を与えることになるかねないのだから、物損事故であれ絶対に起こさないように勤めなければならないのだ。
賠償
物損事故では刑事罰を受けることもなく反則点数が加算されることもないが、賠償、すなわち損壊した器物の補償を免れることはできない。
相手の持ち物が損壊しているのだから当然のことであるが、誠意を持って対応する必要があるだろう。
ちなみにこの相手型への賠償は民事上の責任であり、交通事故を起こした場合の3つの責任のうちの1つである(①刑事責任、②行政責任、③民事上の責任)。
人身事故
物損事故とは異なり、人身事故を起こしてしまった場合には多くの処分を受けることになる。
刑事処分としては、“自動車の運転により人を死傷させる行為等の処分に関する法律”に違反したとして、そこに規定される刑事罰を受けなければならない。
危険な運転を行った上での事故である場合を除いては“過失運転致死傷罪”に問われるケースが多いが、量刑は”7年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金”である。
懲役と聞いて驚かれるかもしれないが、よほど悪質なケースでもなければ数十万円の罰金刑に処せられることがほとんどだ。
行政処分では、安全運転義務違反に問われることは確実(反則点数2点)だが、それに加え、相手の負傷の程度に応じて負荷点数なるものが加算される。
最大で20点もの付加点数が加算される可能性もあり、免許の停止や取消処分を受ける蓋然性が高いことも理解しておいて欲しい。
また、相手が死亡してしまった場合や後遺症が残ったケースでは、多額の賠償金の支払い義務を負うことになる。
終わりに
単に交通事故と言っても、人身事故と物損事故では当事者が受ける処分に大きな違いがあるようだ。
もちろん、“物損事故なら起こしてもよい”と言うことでは決してなく、安全運転に努めなければならないのだ。
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