最近、テレビニュース等で高速道路の逆走事件が報じられることが多いが、本当に恐ろしいことである。
今回はその罰則について投稿するが、法律を調べてみると意外な事実が…
逆走の発生件数
東日本・中日本・西日本・首都・阪神・本州四国連絡高速道路株式会社の発表によれば、平成23年から平成27年9月の間に発生した高速道路逆走事案の件数は916件。
年間約180件もの高速道路逆走事案が発生していることには驚くばかりだが、発生場所については、最も多いのがIC及びJCT(474件)で、本線上(195件)がこれに続く。
走行速度が100km/hにも達する高速道路本線上での逆走は危険極まる行為であり、大惨事に発展する可能性が大いにあることからも、特に憂慮すべき事案と言える。
原因
高速道路においてこれほど多くの逆走事案が発生していることには驚かされるが、以下にその典型的なパターンを載せた。
いずれも普通に運転している限りまず起こり得ないはずだが、やはりその状況ごとの判断ミスが原因であると同時に、先に紹介した逆走事案916件のうち68パーセントが65歳以上の高齢ドライバーによるものであることを考えれば判断力低下の影響も否定できないと思われる。
また、IC(インターチェンジ)やJCT(ジャンクション)の降り口の形状が誤進入を招きやすいことや道路標識等の不備が逆走の原因となる可能性も否定できないが、“降り口を間違えたからUターンする”と言う暴挙はあくまでも運転者のモラルの問題と言ってよいだろう。
- 本線合流時に右折 → 逆走
- 降り口を間違えた運転者がUターンし本線に合流 → 逆走
- 目的の降り口を誤って通過してしまったため本線上でUターン → 逆走
- 料金所を通過後に、誤って降り口から進入し本線合流 → 逆走
- サービスエリアから本線に合流の際に降り口から進入 → 逆走
罰則
事が重大だけに、高速道路の逆走に対しては厳しい処分が設けられているようにも思えるが、調べてみると意外な事実が明らかになる。
と言うのも、道路交通法には高速道路の逆走に特化した規定がなく、仮に検挙されたとしても“左側通行の原則”に違反したとして“通行区分違反”に問われるだけなのだ。
(通行区分)
車両は道路の中央(軌道が道路の側端寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
道路交通法第17条第4項より
下の表にある通りその処分は指定場所一時不停止等の一般的な交通違反と比べて特に厳しいものでもなく、反則金も適用される。
もちろん、逆走が原因で交通事故に発展したとなればより重い処分を受けるのだろうが、単に交通違反として検挙される場合には軽微な交通違反として処分されるのみ…
高速道路逆走の危険性を考えれば、その処分の軽さに驚くばかりである。
反則行為 | 行政処分 | 刑事処分 | ||||
点数 | 反則金(円) | 罰則 | ||||
大型 | 普通 | 2輪 | 原付 | |||
通行区分違反 | 2点 | 12,000 | 9,000 | 7,000 | 6,000 | 3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金 |
逆走事故
高速道路を逆走して交通事故を起こしたとなれば当然ながら当事者は重い処分を受けることになるが、具体的には“道路交通法”と“自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律”に対する違反を問われ、後者の規定に従い“過失運転致死傷罪”が適用される確率が高い。
その罰則は“7年以下の懲役又は100万円以下の罰金”ととても厳しく、故意に高速道路を逆走した場合には“危険運転致死傷罪”が適用される可能性もある。
罪名 | 刑罰 |
過失運転致死傷 | 7年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
危険運転致傷 | 15年以下の懲役 |
危険運転致死 | 1年以上の有期(20年以下)懲役 |
過失割合
高速道路に限らず、逆走に起因する事故が発生した場合は逆走車両が全面的にその過失を追求されるのが原則である。
いわゆる“10:0”であり、当事者は負傷者への慰謝料や損壊物に対する補償など高額な賠償金の支払いを余儀なくされることに…。
稀に10:0を免れることができるケースもあるらしいが、事の性質からして当事者の責任は大きく、保険の適用により金銭的問題こそ解決可能であるものの、その道義的責任を逃れることはできないはずだ。
終わりに
今回は高速道路の逆走について考察してきたが、その罰則が意外に軽いことをご理解いただけただろうか。
さすがに事故を起こしたとなれば話は別だが、単に違反しただけなら軽微な交通違反と同程度の処分で済んでしまう現行制度には、やはり改正の余地があるだろう。
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