トヨタ・カムリに試乗する期会があったので、その内容をレポートしたい。
もともと高い評価を得ている車である事は知っていたが、実際に運転してみると、想像以上の素晴らしい車であった。
試乗車
カムリには3つのグレードが用意されているが、いずれもハイブリッド車で、駆動方式はFFに統一されている。
今回試乗したのは、特別仕様モデルの“G パッケージ・PREMIUM BLACK”。
LEDヘッドライトなどの装備の搭載に加え、シートの質感もアップしており、特に内装デザインについては高級感すら感じるつくりであった。
グレード | 駆動方式 |
ハイブリッド”レザーパッケージ” | FF |
ハイブリッド”Gパッケージ” | FF |
ハイブリッド | FF |
ハイブリッド”Gパッケージ・PREMIUM BLACK” | FF |
走り
原動機
搭載されるのは2.5Lのアトキンソンサイクルエンジンで、SAIに搭載される2.4Lエンジンよりも新しく、排気量も100cc大きい。
これとモーターの組み合わせによるハイブリッドシステムは、最高出力205馬力が確保され、余裕のある走りの実現に貢献している。
スペックは以下の通り。
型式 | 総排気量 | 最高出力kW(PS)/r.p.m | 最大トルクN・m(kgf・m)/r.p.m | |
エンジン | 2AR-FXE | 2.493 | 118( 160)/5,700 | 213(21.7)/r.p.m |
モーター | 2JM | 105(143) | 270(27.5) |
加速
出足の加速のよさには目を見張るものがある。
軽くアクセルペダルを踏むだけでスーッと速度が上昇していくが、SAIのような出足の重さを感じることは全くない。
やはり、エンジン排気量が100cc大きいこと、エンジンが新しいことが影響していると思えるが、ストレスのない発進を実現していることは見事だ。
また、ペダルを強く踏み込んだ時の加速力は、背中がシートに押し付けられるほどに鋭い。
車体がこれほど大きい事を考えれば、極めて優秀な動力性能を持ち合わせていると言えるのではないだろうか。
安定感
車体の安定感が素晴らしい。
SAIよりもホイールベースとトレッドが長いことが影響していると思われるが、本当に見事な車体安定性を実現している。
重心が低いこともあり、車体が路面に張り付くような印象が伝わってくることも好印象だ。
走行速度が上がれば上がるほどその安定感のよさが際立つと思われるが、高速道路を走行する場合の安心感、乗員にとっての快適性も申し分ないはず。
カムリに興味がある方には、是非とも一度試乗されることをお勧めすしたい。
前方視界
運転席からの前方視界が素晴らしくよいことも、上質な走りの実現に大きく貢献している。
ダッシュボードの形状がフラットであることが1番の理由だが、非情に見晴らしが良く、安心して運転することができるのだ。
実際に運転された人はご存知だと思うが、視界がよいため、ボディサイズの大きさがそれほど気にならない。
この点については、ダッシュボードがせり上がっているため前方視界が悪く感じられてしまうことがあるSAIと比べて、圧倒的に優れていると言えるだろう。
乗り心地
足回りは硬過ぎず柔らか過ぎずという印象だが、ホイールベースとトレッド幅が十分に確保されていることもあり、乗り心地は極めて良好。
路面からの入力は非常に小さなものに軽減されているし、体が横に揺すられることも全くなかった。
この辺りはいかにもトヨタのセダンと言ったところで、ゆったりと快適なドライブを楽しむことができると思う。
静粛性
静粛性についても全く不満はない。
エンジン排気量に余裕があることもあり、その音は全くと言ってよいほど聞こえないが、風切り音やロードノイズもうまく遮断されている。
静粛性が高いことで一定の評価を得ているSAIと比べても、勝とも劣らないと言えるレベルだと思う。
燃費
メーカー公表燃費は23.4lm/Lだが、16インチホイールを装着しているモデルに限っては、25.4km/Lと素晴らしい燃費性能を実現している。
SAIと同じハイブリッドシステムであることを考えれば、運転の工夫次第では、メーカー公表値を上回る数値が出る可能性も十分にあるはずだ。
試乗車の燃費計は16.7km/Lを表示していたが、走行距離が伸びない環境での走行であることを考慮すれば、優秀な数値であると言える。
SAIのデータから考えても、普通に運転しても15km/Lを下回ることはないだろうし、遠出する場合であれば、25km/Lを超える数値を記録することも不可能ではないと思う。
サイズ
ボディサイズは、全長が4,850mmで全幅が1,825mm。
全長、全幅共に国内では最も大きな部類に入るサイズで、我が国の道路事情を考慮すれば若干取り回しが悪いことは否定できない。
とは言え、先に述べた通り前方視界がよいので、数値に現れるほどの運転のし難さを感じることはないはずだ。
もちろん、この点については運転技術によるところも大きいので、実際に試乗してみることが何よりも重要であると思う。
全長(mm) | 全幅(mm) | 全高(mm) | 室内長(mm) | 室内幅(mm) | 室内高(mm) |
4,850 | 1,825 | 1,470 | 2,080 | 1,525 | 1,210 |
実用性
室内の広さに全く不満はないが、特に、後席足元の広大なスペースには驚かされる。
身長165cmの私が乗り込んで膝前に拳が5つ入るほどの広さであるから、大柄な男性でもゆったりと座ることができるはずだ。
ラゲッジも広く440Lを確保しているが、トランクスルー機能も搭載しているので、長尺物などを積む場合にも全く問題ない。
デザイン
外観
やはり、世界中で販売されているモデルだけあり、オーソドックスとも言える外観デザインである。
まさに、セダンの基本ともいうべく風貌で、エクステリアが個性的なSAIとは対照的だ。
言い換えれば、誰にでも支持されるデザインで、年令や性別を問わずに多くのユーザーに支持されると思う。
内装
内装についても、SAIとは対照的にベーシックな印象が強い。
シフトレバーやインパネデザインはまさにセダンの王道もと言えるものであると思うが、これも多くの人に支持されている理由だと思う。
シートは、最上位グレードである”レザーパッケージ”を選択した場合のみレザー仕様になるが、ファブリックシートの質感についてはイマイチ高級感にかける印象がある。
この点は、SAIと比べ大きく劣ってしまうことも事実だ。
ところが、今回試乗した特別仕様の“G PREMIUM BLACK”になると、全く別の車ではないかと思うほど質感が向上する。
シートの質感はグレードごとにかなり異なるので、ご購入を検討されている方は、ディーラーで実車を確認することが大切だ思う。
価格
各グレードの価格は以下の通り。
グレード | 価格 |
ハイブリッド“レザーパッケージ” | 4,028,400円 |
ハイブリッド“Gパッケージ” | 3,427,527円 |
ハイブリッド | 3,221,345円 |
ハイブリッド“Gパッケージ・PREMIUM BLACK” | 3,591,491円 |
最上位グレードの”レザーパッケージ”になると、乗り出し価格が450万円近くになってしまうのだが、大衆車ではなく高級車の部類に入るのではないだろうか。
それだけに、特別仕様の”PREMIUM BLACK”以外のシートの質感をもう少し向上させて欲しいところだ。
終わりに
カムリに試乗してみて、総合的に素晴らしい車であることを改めて実感することができた。
走り、実用性ともに申し分のない出来であるが、実際に試乗することが何よりも大切だと思うので、是非ともディラーへ足を運んで欲しいと思う。
コメント