デミオと共に私の愛車である、トヨタのハイブリッドセダンのSAI。
優れた静粛性が一定の評価を得ているが、今回はその加速性能について調査してみた。
走り出し
走り出しの加速が抜群に速いとは決して言えず、むしろ、出足は重いと感じられることもしばしばである。
とは言え、パワー不足を感じるわけではなく、その動力性能には余裕があるようだ。
それでいながら、“軽快”ではなく“重厚”な発進加速をするのだから、狙ってそのような味付けがなされていると言うことだろう。
クラウンに例えて言うなら、“アスリートよりもロイヤルに近いような印象”を受ける。
動力性能のスペックは以下の通り。
原動機 | 型番 | 総排気量 | 最高出力 | 最大トルク |
エンジン | 2AZ-FXE | 2.362L | 110kW [150PS/6,000r.p.m] | 187N・m [19.1kgf・m/4,400r.p.m] |
モーター | 2JM | 105kW [143PS] | 270N・m [27.5kgf・m] | |
※ システム総合出力(エンジン+モーター): 140kW [190PS] |
燃費重視の“アトキンソンサイクルエンジン”が搭載されているので、排気量に対しては控えめな数値だ。
これをモーターで補うのがハイブリッドシステムであり、システム総合出力は“190馬力”を確保しているが、普段はそれをかなり抑えてチューニングされている。
EV発進
SAIはハイブリッド車であり、エンジンのみならずモーターも動力源となるので、そのモーターの力のみで発進すること(EV発進)も可能だ。
インジケーターランプが”EV走行可能ゾーン”に収まるような開度でアクセルを踏めばEV発進が可能なのだが、出力は決して十分ではない。
というのも、搭載されるモーターは、数値的には出力、トルク共に強力なものであるが、いつでもその動力性能をフルに活用できるわけではないのだ。
モーターのみでのEV発進の際には、その出力のうちの一定の割合しか使用されないようになっているらしい。
ハイブリッド車でありEV走行が可能であると言っても、電気自動車のようにはいかないことは理解しておかなければならないということなのだろう。
よって、EVモードでの発進は、夜間等で後続車両がいない場合や下り勾配を走行する場合に限定するべきだ。
普段は、エンジンも使って加速するのが賢明な方法である。
0-100km/h
車の加速性能を知るための1つの方法として、発進から時速100km/hに達するまでのタイムを計測する方法がある。
よく“0-100km/h”と呼ばれることが多いのだが、この場合はアクセルを限界まで踏み込み、”全力加速”を行うものだ。
0-100km/hを競う大会があるわけではないし、実用性の観点からは全く無意味なのだが、車に詳しい人にとってはどうしても気になってしまう数字だ。
SAI場合、そのタイムは、メーカー公表値で“8.8秒”である。
動画投稿サイトにそのタイムを計測する様子がアップされていたりもするが、だいたい同じくらいの結果になっているようだ。
多少の誤差を考慮しても、SAIの0-100km/hのタイムは、“8秒代中盤から後半”と考えるのがよいだろう。
この”8秒代中盤から後半と”言うのが速いのか遅いのかわからない人も多くいると思うが、乗用車であれば、10秒を切れば速い部類に入ると言われている。
ちなみに、2リッタークラスのミニバンの場合は約11〜12秒、1.5リッタークラスのコンパクトカーで12~13秒あたりだ。
トヨタの最高級セダンであるレクサスLSで約6秒。
加速に関してはNo.1という印象も強い日産のスカイライン・ハイブリッドで4秒代中盤と言ったところだ。
燃費優先のハイブリッド車らしく、普段はパワーを抑えている感が強いSAIだが、全力を出した場合の加速性能はなかなかのものであると言えるだろう。
加速後
SAIの発進加速が鋭いとは言えない一方、中間加速はかなりよいという印象を受ける。
特に時速60km/hに近付いたあたりからの加速は見事で、気持ち良く速度が上がっていくのを感じることができるほどだ。
この段階ではモーターのアシストが終わり、動力源はエンジンのみと言う状態だが、十分な力強さを感じることができる。
搭載されるエンジンは、このあたりからの領域が最も効率がよいのだろう。
SAIは静粛性がかなり高く、時速60km/hあたりでもエンジン音はほぼ全くと言っていいほど入ってこない。
その静粛性の影響もあり、速度が出すぎていることに気が付かないこともあるので、注意が必要だ。
“スピードを感じさせないゆったりとした走りの実現”がセダンの使命でもあることを考えれば、この点でも十分に合格点を与えることができるだろう。
登り勾配
ドライバーがストレスを感じることが多いのが登り勾配での加速だ。
パワーがない車の場合、アクセルを踏み込んでもなかなか車が前に進まずにイライラすることも少なくない。
このSAIの場合は、結構急な上り勾配でも問題なく対応することが可能。
排気量3リッター越えの車やディーゼル車のように、“余裕を持て余す”と言う感じではないが、しっかりと仕事をしてくれる印象がある。
特に強く感じることは、エンジンよりもモーターの力が発揮されていると言うことだ。
勾配がきつくなり、速度が落ちてしまった時に、車が“グィッ”と再び前に出る瞬間があるが、ここでモーターが再び稼働し、強力にエンジンをサポートしてくれる。
発進加速の場合には、モーターの出力がかなり抑えられていると感じたが、このような場面では余すことなくその力を発揮しているようだ。
余談になるが、さらに出力が必要と車が判断すれば、バッテリーからのエネルギー供給を増やし、モーターの出力を最大限に高めることも可能。
高速道路
最後に、高速道路での加速についてだが、これもまたかなりよいと思う。
時速80km/hから時速100km/hあたりまで加速する場合、非常に滑らかに加速して行くのだが、エンジン音も静かなままで、スーッと速度が上昇して行く。
車体重量もなかなか思いために、車体の安定感が素晴らしく、動力性能にもまだまだ余裕を感じる。
特に、“スポーツモード”での加速は見事だ。
日本の道路事情では全く必要ないし、厳禁であるが、150km/hくらいまでならスムーズに加速できるのではないかと言う印象がある。
終わりに
優れた静粛性のもとで、ゆったりと優雅に走るイメージがあるSAIだが、やろうと思えば結構な加速を披露することもできる車だ。
なお、加速以外の点も含めたトヨタSAIの全体的なレビューも投稿しているのでそちらも参考にして欲しい。
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