最近では、残業代込みの賃金形態を取っている企業も少なくない。
この残業代込みでの給与体系は法的に違法ではないが、当然、法律の範囲内で運用されなければならないのだが、労働者の無知を利用して不当な残業を強いている企業も存在する。
そこで今回は、残業代込みの賃金形態について考えてみたい。
残業代込みの賃金形態とは
まずは、残業代込みの賃金形態とはどのようなものなのかを確認しておく。
簡単に言えば、その名の通り毎月支払われる給料にあらかじめ残業分の賃金が含まれている仕組みだ。
飲食店の店長がこの賃金形態で勤務していることが多い。
私がファーストフード業界で働いているときの店長も、やはりこの仕組みのもとで給料を受け取っていた。
簡単な例をあげてみる。
本来の基本給が30万円の飲食店店長が、5万円の残業代込みで毎月35万円の賃金を受け取るとする。
基本給より店長の時給を換算すると、その時給が1875円。
この場合、労働時間は1日8時間で月160時間とする。
残業代は基本の賃金の25%増しで支払われなければならないので、このケースの残業代の時給は、1875×1.25で求められる。
するとその時給は2340円ということになる。
この条件で5万円分の残業代を受け取るためには、1月あたり21時間の残業をする計算だ。
1日あたり1時間と言ったところだ。
残業代込みの賃金形態の問題点
この残業代込みの賃金形態には様々な問題点がある。
多くの労働者は労働基準法さえ十分に理解していないのが現状であるが、ブラック企業がそれを利用し不当な残業をさせているケースも多い。
以下にその例をあげる。
① 残業代が含まれていることを理由に、法外な時間の残業を強いられる。
② 実は給料のうちの大半が残業分である(ものすごい量の残業時間が含まれる)。
③ 実は時給に換算すると最低賃金を下回っている。
など
これらのケースは、労働者が企業との契約内容の合法性、違法性を正しく判断できないことにつけ込まれたものだ。
ブラック企業がそれを利用しないはずはない。
法律違反をしているブラック企業の典型的なパターンを以下にまとめるので、ぜひチェックしてほしい。
違法な残業代込み賃金形態の代表例!
含まれる残業代と残業時間の明記がない
残業代込みの給与として提示される条件に、何時間の残業が含まれるのか、どれほどの金額の残業代が含まれるのかが明記されていない場合は要注意だ。
万が一そうであればブラック企業確定と言っても過言ではないだろう。
法的には、残業代込みの賃金形態を採用する場合は、使用者は労働者に対し給与に含まれる全業時間と残業代を提示しなけれなばらないことになっている。
これがなく、単に「残業代を含み月35万円」などど曖昧な記載がなされている場合はただ事ではない。
直ちに会社にその内訳を問うべきだ。ここで、その会社が明確な回答を行わないようであれば、間違いなくブラック企業である。
最悪のケースが、月給のうちの大半が残業代によるものというパターンだ。>
上記のケースであれば、月35万円を稼ぐために法外な残業を強いられることも少なくない。
極端な話、残業代込みで35万の給料と言われたが、そのうち残業代が15万円分を占めるという場合もある。
しかも契約を結んだ後で初めて知らされるということも・・・。
その場合は、基本給が20万であるから、時給に換算すると1250円。
1日8時間、月160時間労働とした場合である。
残業代の時給は1250円の25パーセント増しであるから1560円。
残業代の時給が1560円で15万円の残業代分働くとすると、1月あたり96時間の残業時間が発生することになる。
1日4.8時間の残業だ・・・。
これは、完全に36協定に違反するもであり、違法行為である。
このような劣悪な労働条件で過重な労働を強いられている人が多くいるということを認識すると同時に、ブラック企業の提示する労働条件の違法性を見抜くことが重要だ。
含まれる残業時間以外の残業手当を支払わない
残業代込みの賃金形態を採用しているブラック企業のほとんどは、この手を使っている。
残業代込みをいいことに、永遠とサービス残業を強いるのだ。
そもそも、残業代込みというのはあらかじめ明記された残業時間分の残業代 を月給に含むというものである。
その範囲を超えた分の残業代は別途支払われなければならないのだ。
であるからこそ、使用者はその契約条件に毎月の給料に含まれる残業時間と残業代について明記しなければならないのだ。
契約条件に、月給に含まれる残業時間と残業代についての記載がない企業は、明らかにわざとそうしている可能性がある。
この事実を労働者に知られては困るのである。
労働者の側も無知ではいけない。
契約の時点でこの点は必ず見極めなければならない。
終わりに
こうしてみてみると、残業代込みの賃金形態には様々な問題があることが明らかになる。
何度も繰り返してきたが、最大の原因は労働者に労働法性に関する知識がないということだ。
ブラック企業は巧妙にここをついてくる。
労働者の無知につけ込み、法律違反を犯し、法外な残業を強いるブラック企業の責任はいうまでもないことである。
しかし、我々労働者も不勉強なままではいけない。
理不尽なブラック企業に使い回されることを防ぐためにも、労働基準法はじめ必要な知識を身につけ、ブラック企業と対峙していくことが何よりも増して重要なことである。
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