タイヤの空気圧は高めがいいって本当!? 乗り心地への影響は?

4月になり、冬タイヤから夏タイヤへのタイヤ交換シーズンを迎えているが、安全かつ快適な運転のためにはタイヤの空気圧を適正値に保つことが重要である。

ところが、その空気圧を“あえて高め”にした方が良いと言う意見を耳にしたので、今回はその是非を検討したい。

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タイヤと空気圧

タイヤの空気圧が燃費や乗り心地に与える影響は大きく、車の性能を最大に発揮させるためにも空気圧を最適な状態に調整することが求められる。

“最適な空気圧”とは自動車メーカーが車ごとに決定する車両指定空気圧のことを言い、それよりも圧が高すぎても低すぎても弊害が発生してしまうが、以下にその代表例をまとめた。

空気圧過多


※画像はグッドイヤーさん“タイヤの空気圧”(https://www.goodyear.co.jp/knowledge/air.html)より引用。

空気圧過多の状態で走行すると、①タイヤ中央部の摩耗、②バースト、③乗り心地の悪化等が発生しやすくなる。

中央部の磨耗

空気圧が多過ぎるとタイヤのたわみがなくなり、路面との接地面がタイヤ中央部に限定され、結果として中央部の劣化が加速する。

均一ではなくタイヤのある部分だけが磨耗する現象を偏磨耗(この場合はセンター磨耗)と呼ぶが、タイヤの寿命を縮める要因となるので注意が必要だ。

バースト・コード切れ

空気圧過多の状態では適度なタイヤのたわみが失われ、衝撃吸収能力が減少してタイヤが傷つきやすくなり、バーストやコード切れが起こるリスクが高まる。

乗り心地の悪化

タイヤのたわみがなくなり衝撃吸収力が低下するため、空気圧過多の状態では乗り心地が悪化する。

詳しくは後述するが、車体がポンポン跳ねるように感じられることが多く、ボディや足回りの剛性に欠ける車両ほどその影響を受けやすい。

空気圧不足


※画像はグッドイヤーさん“タイヤの空気圧”(https://www.goodyear.co.jp/knowledge/air.html)より引用。

空気圧が不足した状態では、①タイヤショルダー部の磨耗、②発熱による損傷、③燃費の悪化等が発生する確率が高まる。

発熱に起因するバーストや燃費悪化は問題視されることが多く、空気圧過多よりも空気圧不足による弊害がよりシビアなものと認識される傾向にあるようだ。

ショルダー部の磨耗

空気圧不足の状態ではタイヤのたわみが大きくなり、タイヤの両ショルダー部が路面に接地して磨耗しやすくなる。

その結果偏磨耗(片減り)が発生し、センター磨耗同様にタイヤの寿命を縮めてしまう。

発熱による損傷

空気圧不足による弊害の中で最も恐ろしいのが発熱によるタイヤの損傷だが、タイヤがひどくたわんだ状態で高速走行を続けることでタイヤの側面が波を打ち発熱する。

これはスタンディングウェーブ現象と呼ばれ、タイヤの内部構造が熱により損傷し、最終的にバーストする危険性が圧倒的に高まるのだ。

空気圧が適正値を大きく下回らない限りこれが発生する確率は低いものの、非常に危険な状況を招く恐れがあるだけに細心の注意を払いたいところである。

ハイドロプレーニング現象の発生

水が溜まった路面を走行中、タイヤと路面との間に水が入り込み、車がまるで氷上を滑るかのごとく制御を失う現象をハイドロプレーニング現象と呼ぶ。

タイヤは最適な状態で路面と接することで最高の排水性能を発揮するが、空気圧の不足により路面との接地面積が増えると路面との間の水を排水しきれなくなり、非常に危険な状況を招く恐れがある。

燃費の悪化

空気圧が不足すると燃費も悪化するが、タイヤのたわみにより路面との接地面積が増え、転がり抵抗が増す訳だから当然と言えば当然のことである。

“あえて高め”の問題点

多すぎても少なすぎても車の走行性能が低下し、場合によっては危険な状況を招く可能性もあるだけに、タイヤの空気圧を適正な値に調整することは必要不可欠である。

その一方で、タイヤの空気は自然に抜けるものであり(1ヶ月に10~20kPa程度)それを見越して“あえて高め”に空気圧を調整する人も多いと聞く。

しかし、乗り心地の悪化や走行中の摩擦熱による空気圧の上昇を考えれば、決して奨励できることではないのだ。

車体が跳ねる

前述の通り空気圧過多の弊害として乗り心地の悪化が見られるが、必要以上にタイヤのたわみが失われ、衝撃吸収力が減少することで乗員が不快な思いをすることになる。

先日、試しに車両指定空気圧よりも約20kPa高い状態で走行してみたところ、衝撃緩和能力の低下が顕著で、“タイヤが弾み車全体が跳ねる”印象が強くこの上ない不快感を味わうことに…

走行速度が上がれば上がるほどこの傾向が強まり、100km/hで高速道路を走行した時にはさすがに怖いとまでは言わないものの、車体の安定性に多少の不安を感じた。

車の足回りが柔らかい場合、タイヤが“エコタイヤ”の場合もその影響を強く受けることになるが、この様な乗り心地の悪化を招くこと1つを採っても、月に1度の空気圧調整をよほど面倒に思う方を除いて、“あえて高め”のメリットは皆無と言える。

摩擦熱による空気圧の上昇

路面との摩擦によりゴムが熱を持つことでタイヤの温度が高まり、結果として空気圧が増えるが、高速道路を120km/hで走行した場合にはタイヤ内部の温度が40~50℃も上昇し、空気圧は20~30kPaも増えると言われている。

もちろん気温の変化によっても空気圧は変動し、所定の計算式に当てはめれば気温が10℃上がるにつれ空気圧が10kPa増加する計算だ。

以上のことからも、空気圧過多の状態での高速道路走行や炎天下での運転は乗り心地の悪化を招くリスクが余計に高まるので、注意が必要である。

高速道路走行時の空気圧

“高速道路を走行する時はタイヤの空気圧を高めにした方が良い”と言う意見をしばしば耳にするが、その背景には高速走行によりタイヤに強い遠心力が発生し、タイヤにかかる負荷が増えスタンディングウェーブ現象が発生するのを防止しようと言う考えがある。

しかしながら、最近のタイヤの耐久性は一昔前とは比較にならないほど優秀であり、少なくとも現在は、敢えて空気圧を多めに入れる理由は見当たらない。

確かに空気圧が不足した状態での高速走行はスタンディングウェーブ現象発生のリスクを高めるが、車両指定空気圧を大きく下回らない限りはまず心配なく、月に一度空気圧のチェックを行い最適値に調整するだけで対策としては十分である。

摩擦熱によりタイヤの空気圧が上昇することを考えても“空気圧高め”の状態での高速走行がもたらすのは著しい乗り心地の悪化のみであり、メリットなど何一つないのだ。

終わりに

今回は空気圧を“あえて高め”に設定することの是非を考察してきたが、タイヤの衝撃吸収力の低下による乗り心地の悪化は思いの外深刻であり、決してお奨めできないのが現実である。

現在では無料で空気圧計やコンプレッサーを貸し出しているガソリンスタンドやカー用品店も多く、空気圧のチェックは難しいことではないので、月に一度しっかりと調整して可能な限り適正空気圧をキープするように心掛けよう。

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