先行車両を追い越す場合、状況を正確に把握するとともに交通ルールを厳守した上での的確な操作が求められるが、その一方で追い付かれた車両にも守るべき規則があることをご存知だろうか。
今回は、この“追い付かれた車両の義務”について投稿する。
はじめに
はじめに追い越しをする場合の注意点を確認しておきたいが、“道路交通法第28条”にその根拠を見ることができる。
(追い越しの方法)
1 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越される車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第25条第2項又は第 34条第2項若しくは第4項の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
道路交通法第28条より
ご覧の通り、追い越しをする場合は原則として先行車両の右側を通行する必要があり、交差点や道路外への右折のために道路右側に寄っている車両を追い越す場合に限り左側の通行が可であることをご確認いただけるはずだ。
もちろん追い越しが禁止される状況もあるが、①先行車両がさらに他の車両を追い越そうとしている場合と②追い越し禁止場所を通行している場合がこれに該当する。
追い付かれた車両の義務
ここから本題に入るが、“追い付かれた車両”にも厳守すべきルールがあり、以下にその根拠となる“道路交通法第27条”を載せた。
(他の車両に追いつかれた車両の義務)
車両は、第22条第1項の規定に基づく政令で定める最高速度が高い車両に追い付かれたときは、その追いついた車両が当該車両の追い越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追い付かれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
道路交通法第27条より
ご覧の通り、同条文では追い越しをしようとする車両に追い付かれた車両がスピードを上げることを禁止しており、これに違反した場合は“追い付かれた車両の義務違反”に問われるのだ。
反則金や罰則は下の表にある通りだが、一般に知られていない交通違反と言うこともあり、この機会にしっかりと理解しておきたいところである。
反則行為 | 行政処分 | 刑事処分 | ||||
点数 | 反則金(円) | 罰則 | ||||
大型 | 普通 | 2輪 | 原付 | |||
追い付かれた車両の義務違反 | 1点 | 7,000 | 6,000 | 6,000 | 5,000 | 5万円以下の罰金 |
注意点
自車が追い越されるのを良しと思わず、走行速度を上げて対抗する事例も報告されているが、絶対に行ってはならない行為である。
これが原因で“バトル状態”になれば危険極まりないことは言うまでもなく、仮に事故に発展して死傷者が出た場合には当事者が“危険運転致死傷罪”に問われる可能性もあるのだ。
事の重大性を考えれば当然ではあるが、その罰則は非常に重く、例え後続車両が“煽り運転”を仕掛けて来た場合でも軽率な行動は厳禁である。
- 危険運転致死罪(相手が死亡):1年以上(20年以下)の有期懲役
- 危険運転致傷罪(相手が負傷):15年以下の懲役
終わりに
“追い付かれた車両の義務”並びに“追い付かれた車両の義務違反”についてご理解いただけただろうか。
余計なトラブルに巻き込まれることを防ぐためにも、後方の車両が追い越しをかけて来た時には決して走行速度を上げることなく、追い越しが完了するのを待つようにしよう。
コメント
追いつかれた車両の義務という点では27条の2を紹介する方が良い。
遅い車線を走っている場合以外は道を譲れと決められている。
自分が最高速度で走行しているかどうかは関係なく、他の車に
追いつかれたかどうかだけで決まる。
ご意見ありがとうございます。的確なご指摘で是非参考にさせていただきたく存じます。