最近、自転車の通行マナーの悪さが取り沙汰されることが多いが、道路交通法に違反する行為は当然のことながら取り締まりの対象となる。
今回は自転車の違反により警察に捕まった場合の流れや罰則に付いて投稿するので、ぜひ最後までお読みいただきたいと思う。
自転車と道路交通法
はじめに自動車と同様に自転車の運転に対しても道路交通法が適用されることを確認しておきたいが、その根拠となる“道路交通法第2条”を以下に載せた。
(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(第1~7号省略)
8 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
11 軽車両 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす及び歩行補助車等以外のものをいう。
道路交通法第2条より
同条では自転車が軽車両に該当すること、軽車両が車両に含まれることが規定されているが、道路交通法には車両の順守事項並びに軽車両の順守事項が定められており、自転車の運転者はこれらに従う義務を負うのだ。
言うまでもなく、規定に違反した運転者は交通違反に問われる。
検挙と罰則
自転車の交通違反には“交通反則通告制度”、が適用されない。
交通反則通告制度とは反則金を納付することで当該違反が刑事事件に発展することを回避できる仕組みを言うが、その適用外となれば、法理論上は検挙と同時に確実に刑事手続きへ移行することに…。
その後起訴が行われれば当事者は被告人となるが、略式手続きが採用された場合には無条件で有罪が確定、正式裁判に臨むにせよこれまた面倒なことになるのは必至であるから、自転車を運転する時は自動車以上に緊張感を持ち、最新の注意を払う必要があると言える。
なお、代表的な交通違反に対する罰則を以下に載せた。
反則行為 | 罰則 |
酒酔い運転 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
信号無視 | 3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金 |
指定場所一時不停止 | |
通行区分違反 | |
遮断踏切立ち入り違反 | |
安全運転義務違反 |
自転車レッドカード
既に確認した通り、自転車の交通違反で警察に捕まれば法理論上は確実に刑事事件へと発展することになるのだが、実際は捕まったとしても注意で済まされることがほとんどである。
この事実に驚かれる方も多いと思うが、日々発生する数多の道路交通法違反を逐一検挙し、さらに刑事手続きを行うことは警察にとっても容易ではなく、これらに加え自転車の違反に対する処理を行うなど現実的に不可能なのだ。
そこで、交通の安全にとって特に危険とされる“危険行為14類型”を指定して取り締まりの対象を限定するとともに、悪質な場合を除いて検挙(ここでは刑事事件としての立件)を行わないようにしているとのこと。
ただし、警察管による注意を受けた運転者には“自転車指導警告カード”が交付され、その指導記録が警察によって保管される。
よって、何度も違反行為をして警察に呼び止められることを繰り返した場合はさすがに注意では済まされず、検挙されることも十分に考えられると思う。
点数
自転車の運転は自動車の運転免許とは全く無関係であるから、例え違反で検挙されたとしても反則点数が加算されることはない。
よって、当然ながら自動車運転免許の停止や取り消し処分とも無縁である。
危険行為14類型
前述の通り、自転車の違反に対しては14の行為(危険行為14類型)に限定して取締りが行われるが、その対象となる具体的な行為は下にまとめた通り。
道路交通法の規定違反の中からも特に危険度が高いものが優先されて選ばれているようで、やはり、“信号無視”や“酒酔い運転”などが名を連ねている。
- 信号無視
- 通行禁止道路(場所)の通行
- 歩行者用道路における歩行者妨害
- 歩道通行や車道における右側通行
- 路側帯における歩行者通行妨害
- 遮断踏切への立ち入り
- 左方優先車の妨害・優先道路通行車の妨害等
- 右折時における直進車や左折車の通行妨害
- 環状交差点における安全進行義務違反
- 指定場所一時不停止
- 歩道での歩行者妨害等
- 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
- 酒酔い運転
- 安全運転義務違反
また、“安全運転義務違反”が採用されていることからも、やはり事故を起こせば確実に検挙の対象となると考えてよいだろう。
悪質な違反
自転車で交通違反をしても注意で済まされることがほとんどであるものの、悪質と判断された場合には検挙され、刑事事件に移行することもあり得る。
例えば、警察官の制止や指示を無視する、あるいは集団で危険運転を行う等の行為がその対象となるが、自身の行為に思い当たる節があるのであれば謙虚に指示に従うようにしよう。
自転車講習制度
3年間に2回自転車での交通違反で検挙された場合(交通事故での検挙を含む)は、警察が実施する講習を受けなければならない。
この“3年間に2回”と言うのは単なる注意や警告ではなく、違反で検挙された後に有罪が確定して刑事処分を受けた回数のことであるから、違反を繰り返した、あるいはよほど悪質な違反をした者が受講の対象になると思われる。
滅多にあることではないだろうが、ここまでくれば講習を受け、自転車を運転する心構えから勉強し直すのも当然と言えるだろう。
ちなみに、講習時間は3時間で受講料は5,700円。
さらに、講習受講義務があるにも関わらずそれを拒否した者に“5万円以下の罰金”が課せられることも覚えておきたいところだが、ここまで来るのに2回の前科が付いているわけだから、この受講不履行により“前科3犯”に…。
このような事態にならないよう、しっかり交通ルールを守らなければならないことを再認識するところである。
事故を起こした場合
自転車の運転で交通事故を起こした場合にも検挙される確率が高い。
相手を負傷させてしまえば安全運転義務違反が適用され、注意や警告では済まされず刑事事件に発展するが、極めて悪質である場合、逃亡または証拠隠滅の可能性があると判断された場合には逮捕される可能性もある。
刑事事件である以上、自身が当事者となった場合には逮捕されたとしても全く不思議でないことを念頭におき、安全運転を心掛けよう。
終わりに
自転車の交通違反に対する取り締まりの状況と実際に捕まった場合の流れをご理解いただけただろうか。
自転車を利用される方には、“自転車だから大丈夫”などと言う根拠のない理屈を並べることなく、しっかりと交通ルールを厳守していただきたいと思うところである。
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