よく比較されるトヨタのハイブリッドセダン、SAIとカムリだが、実際にどちらを購入するか迷われる方も少なくないと聞く。
そこで、今回は、両車を徹底的に比較してみようと思う。
動力性能
エンジン
まずはエンジンスペックから比較していきたいが、結論から言えば、カムリに軍配が上がると言えるだろう。
その理由としては、①カムリに搭載されるエンジンの方が新しいものであることと、②排気量がより大きいことがある。
搭載されるモーターは両車ともに同じものであるが、エンジンスペックが異なるため、システム最高出力に差が生じてしまうことは言うまでもない。
後述するが、この130ccの排気量の差は数字以上に大きいもので、両車の加速性能の違いを明確なものにしていると思われる。
エンジン | システム最高出力 | ||||
型番 | 総排気量 | 最高出力 [kW(PS)/r.p.m] | 最大トルク[N・m(kgf・m)/r.p.m] | ||
SAI | 2AZ-FXE | 2.362L | 110(150)/6,000 | 187(19.1)/4,400 | 140kW(190PS) |
カムリ | 2AR-FXE | 2.493L | 118(160)/5,700 | 213(21.7)/4,500 | 151kW(205PS) |
※ 搭載されるモーターは両者共通。システム最高出力=エンジン+モーターによる総合出力。
加速
両車の発進加速のフィーリングは全く異なるが、カムリの方が明らかに速い。
エンジンが新しいことと排気量が大きいことがその原因なのだろうが、わずが130ccの排気量の差が、ここまでの違いを生むのかと思ってしまうほどその違いは大きい。
SAIの場合は若干”重たい”感じがあるのだが、カムリは実に軽快に走り出し、全くストレスを感じることがないのだ。
アクセルペダルを深く踏み込めばシートに背中が押し付けられるほどの加速をするカムリに対し、SAIの発進加速は少々控えめと言わざるを得ないだろう。
ただし、SAIにはスポーツモードが搭載されており、こちらのモードにすると通常モードとは全く別の加速をする。
一方のカムリにはこの機能が付いていないのだが、スポーツモードでのSAIの加速性能であれば、カムリとの差はそれほど感じられないだろう。
乗り心地
乗り心地については、やはりカムリに軍配が上がると思う。
“ホイールベース”、”トレッド”ともにカムリの方が長いのだから当然のことではあるが、このことが、車体の安定性の差に現れていると言って間違いない。
カムリについては、“路面に張り付くような印象”が強く、その車体安定性には非常に素晴らしいものがある。
SAIの乗り心地に不満があるわけではないが、やはり、カムリの方が好印象を受けるというのが私の意見だ。
ホイールベース(mm) | トレッド | ||
フロント(mm) | リア(mm) | ||
SAI | 2,700 | 1,535 | 1,530 |
カムリ | 2,775 | 1,575 | 1,565 |
前方視界
これについては、カムリの圧勝と言ってもよいかもしれない。
というのも、SAIは、ダッシュボードがせり上がっているために視界が悪く感じられてしまうのだ。
一方で、カムリのダッシュボードはフラットだし、高さもSAIよりも低い。
このことが、非常に良好な前方視界を実現し、ドライバーが感じる安心感の向上に大きく貢献していると言えるだろう。
SAIについても、ダッシュボードの形状に慣れてしまえば問題ないのだが、カムリの素晴らしい前方視界には及ばないと言える。
カムリについては、前方視界がよいために、車体が大きいことによる“取り回しの悪さ”を感じさせないことも評価できるポイントだと思う。
ハンドリング
ハンドリングについても両車の味付けは異なるのだが、こればかりは好みの問題になってくると思う。
ステアリングの重さに違いがあり、カムリは軽く、SAIは重いのだ。
駐車場などでの切り返しの場面や、女性が運転する場合にはカムリの方が扱いやすいかもしれないが、重いステアリングを好まれる方にとっては、SAIの方が好印象のように思える。
コーナーリングでの車体の反応の仕方も異なり、カムリが素直に鼻先が反応するのに対し、SAIは若干反応が遅れる印象があるが、このあたりも好みが分かれるところと言えるだろう。
サイズ
やはり、SAIの方が取り回しがよいと言えるだろう。
カムリのボディサイズは国内のセダンでは最も大きく、“全長4,850mm”、“全幅1,825mm”である。
我が国の道路事情を考えれば扱い難いことは事実で、車庫入れや駐車の場面で苦労する可能性を否定できない。
SAIのサイズは、“全長4,695mm”、“全幅1,770mm”で、カムリに比べ全長が“155mm”、全幅では“55mm”コンパクトだ。
特に、運転が苦手な人にとっては、この差は大きいかもしれない。
全長(mm) | 全幅(mm) | 全高(mm) | |
SAI | 4,695 | 1,770 | 1,485 |
カムリ | 4,850 | 1,825 | 1,470 |
燃費
燃費については、ほぼ互角と言ってよいのではないかと思う。
メーカー公表燃費ではカムリが優っているが、SAIのハイブリッドシステムは最も定評があり、その実力は確かなものである。
運転の仕方次第では、メーカー公表値を上回る数字を記録することもあるので、カムリとの差はほとんどないと言ってよいだろう。
SAI | カムリ | |
17インチホイール装着モデル | 16インチアルミホイール装着モデル | |
22.4km/L | 23.4km/L | 25.4km/L |
居住性
居住性については、やはりカムリの勝ちだ。
ボディサイズが大きいことで、当然ながら室内の広さにも余裕があり、ゆったりと過ごすことができる。
SAIの居住性にも不満があるわけではないが、カムリの場合は、大柄な男性が乗り込んでも不満が出ないほどの室内スペースが確保されていることが魅力的だ。
室内長(mm) | 室内幅(mm) | 室内高(mm) | |
SAI | 2,040 | 1,505 | 1,210 |
カムリ | 2,080 | 1,525 | 1,210 |
デザイン
外観
こればかりは好みの問題もあるので一概には言えないが、カムリはオーソドックスなセダンという印象が強い。
一方のSAIは独特の雰囲気を持っており、少々奇抜とも言えるデザインであるが、近いづいて見たときの”高級感”はSAIの方がより強く感じるようにも思える。
内装
内装デザインについても、カムリがセダンの王道とも言えるスタイルであるのに対し、SAIはより先進的な印象が強い。
SAIのダッシュボード下のインパネ部分については、独創的とも言うか、他にはないデザインになっている。
スピードメーターのデザインについてはカムリの方がよくできており、このあたりも一概には甲乙付け難いというのが正直な印象だ。
一方、シートの質感については圧倒的にSAIが優っているのだが、レザーシートはもちろんのこと、ファブリックシートの高級感についても非常に高く評価することができると思う。
それに対して、カムリのファブリックシートは安っぽい印象を否定できず、少々残念だ。
ところが、特別限定モデルである“Gパッケージ・PREMIUM BLACK”になると別の車になったかのような素晴らしい質感のシートが搭載される。
通常モデルとのギャップが気になるが、内装の質感にこだわるのであれば、こちらの限定モデルか、レザーシートを搭載する“ハイブリッド レザーパッケージ”がよいだろう。
終わりに
SAIとカムリを比較してみると、加速力や視界のよさ、車体の安定感と車としての基本的な部分ではカムリに軍配が上がるように思える。
一方で、コンパクトなボディに先進的で高級感がある内装デザインを持つSAIは、”他とは少し違った車を楽しみたい人”にとっては、ベストな選択肢かもしれない。
コメント