契約駐車場で、“無断駐車した場合罰金~万円”と書いてある看板を見かけることが多いのだが、その額がかなり高額な場合も少なくない。
その法的根拠が気になるが、仮に無断駐車したら本当にその額を支払わなければならないのだろうか。
法的根拠と効力
結論から言えば、契約駐車場の看板に見える“無断駐車したら罰金~万円”などと言う文言には、法的根拠も効力もない。
よって、そこに書かれた額を支払う必要はないのだ。
すでに、今回の疑問が解決したと思われる方もいるかもしれないが、以下にその理由を述べるのでお読みいただければと思う。
罰金とは
今回の疑問を解決するためには、“罰金”の定義を理解することが必要不可欠である。
罰金とは“刑罰”の1つであり、刑罰とは“国家や地方自治体が犯罪を犯したものに課すもの”を言う。
交通違反に対して設けられている“5万円以下の罰金”などという刑罰も、まさに、国家から違反を犯した当事者に対して課せられることを理解して欲しい。
逆を言えば、罰金はじめ刑罰は、個人が個人へ課すものではないのだ。
よって、契約駐車場に多く見られる“無断駐車した場合罰金~万円”と言う文言は、罰金の概念自体を全く理解していないものであり、法的根拠がないのである。
私刑の禁止
上記のことからも、すでに疑問が解決してしまったとも言えるのだが、もう1つ付け加えておきたい。
言うまでもないが、我が国では、“日本国憲法第31条”において私刑が禁止されている。
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。
日本国憲法第31条より
罰金に限らず、如何なる概念を持ってしても個人が個人へ制裁を課す事が許されないことを理解して欲しい。
損害金の請求
無断駐車した当事者に罰金が課せられる事があり得ない一方、損害金が請求される可能性を否定することはできない。
“民法第709条”に規定される“不法行為による損害賠償”にその根拠を見ることができる。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した場合は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法第709条より
簡単に言えば“迷惑料”と言うことになるのだろうが、正確な損害金の額を算出することは容易でないケースが多い。
今回のケースは契約駐車場での出来事であるから、1月ごとの支払い額と実際に駐車が行われた時間を照らし合わせ、最終的な賠償額が決定されるのが現実的な方法だと思う。
その場所を正規に借りていた人が駐車できず、他の有料駐車場を利用せざるを得なかった場合などは、そちらの不利益に対する賠償責任が生じることも当然のことである。
いずれの場合も、看板に記載される額より少額になるケースが圧倒的に多いことは、間違いないだろう。
終わりに
駐車場に記載される無断駐車に対する罰金についての文言に根拠がないことをお分かりいただけたと思う。
とはいえ、他人の迷惑になる行為は絶対に慎むべきであるし、まして道路上への違法駐車は言語道断であることは言うまでもないことである。
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