ハイブリッド車両がバッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動させることはご周知の通りだが、そのバッテリーが上がることもあるらしい。
その原因や症状、対処法は果たして・・・。
はじめに
本題に入る前に、ハイブリッド車両には2つのバッテリーが搭載されていることを確認しておかなければならない。
1つは“補機バッテリー”、もう1つは“駆動用バッテリー”である。
補機バッテリーとは通常のガソリン車にも搭載されているもので、我々が一般的にバッテリーと呼んでいるものを指す。
一方の駆動用バッテリーはモーターを動かすためのものであり、ハイブリッド車両専用のバッテリーと言うことも可能だ。
モーターを駆動させるには強力なエネルギーを要するため、電圧や容量は補機バッテリーよりも圧倒的に大きい。
また、補機バッテリーの充電もこの駆動用バッテリーを介して行われるのだが、駆動用バッテリーの電力が補機バッテリーへ供給されると考えてよいだろう。
ハイブリッド車に搭載されるバッテリー容量 | 電圧 | 電力の使用用途 | |
補機バッテリー | 小 | 約12V |
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駆動用バッテリー | 大 | 約200V |
|
完全放電の可能性
結論から言えば、ハイブリッド車両でもバッテリーが上がりは起こり得る。
しかも、補機バッテリーと駆動用バッテリーのいずれにもその可能性があることを是非とも理解しておいて欲しい。
2つのバッテリー共に充電と放電が繰り返されているが、放電量が充電量を上回る状態が続けば、最終的にはに完全放電(バッテリー上がり)に至るのだ。
原因
補機バッテリーが上がる原因としては、一般的なガソリン車同様、ヘッドライトやエアコン、オーディオ等の消し忘れががある。
ハイブリッド車とはいえ、モーターを駆動させる以外の電装系への電力供給は補機バッテリーから行われているのだ。
よって、それらの機能の取り扱いにはガソリン車同様に注意しなければならない。
一方、駆動用バッテリーが上がることがあるとすれば、長期間車を動かさず放置することによる自然放電が原因である。
ハイブリッドシステムが正常に動作している限りは、エンジンもしくはブレーキ回生システムにより充電が行われるため、バッテリーが空になることはないからだ。
SAIの取り扱い説明書には、“2~3ヶ月に1度、30分ほど走行するように”と記載されているが、このあたりがバッテリーが上がる目安となるのだろう。
自然放電によるバッテリー上がりは補機バッテリーについてもあり得ることなので、十分に注意して欲しい。
症状と対処法
補機バッテリーが上がってしまた場合はハイブリッドシステムを始動させることができない。
通常のガソリン車がセルモーターを動かすことができず、エンジンの始動が不可能になるのと同じと考えてよいだろう。
対処法としては、ガソリン車同様“ジャンピングスタート”により他車のバッテリーの電力を分けてもらうのが一般的だ。
一方、駆動用バッテリーが上がってしまった場合にも走行不可能になる可能性がある。
と言うのも、トヨタが採用するハイブリッド方式である“THS-2”では、駆動用バッテリーの電力を利用しエンジンを始動させているのだ。
よって、これが空になればエンジンが動かないわけで、車自体を動かすことができないことは言うまでもない。
こうなってしまうと一般のユーザーにはどうすることもできないので、ディーラーへ連絡することが唯一の対処法になるだろう。
ただし、他車のハイブリッド車の中には、補機バッテリーの電力でセルモーターを回してエンジンを動かすタイプもある(ガソリン車と同じ)。
この場合は、補機バッテリーさえ問題なければ、その電力でハイブリッドシステムを起動すれば問題ない。
これが正常に動作しさえすれば、エンジンの力で駆動用バッテリーへの充電が行われるからである。
しかしながら、“駆動用バッテリーが上がった状態では補機バッテリーの電力もゼロになっている”と考えたほうがよい。
長期間の放置による自然放電で駆動用バッテリーが空になるということは、それよりもさらに容量が小さい補機バッテリーに電力が残っているはずがないではないか・・・。
よって、少なくとも、補機バッテリーの復旧作業は必須になると思われる。
ハイブリッド車のバッテリーが上がった場合の症状と対処法バッテリーの種類 | 症状 | 対処法 | |
補機バッテリー | ハイブリッドシステムが起動不可能 | ジャンピングスタート ジャンプスターターの使用 | |
駆動用バッテリー | THS-2方式 | エンジンの始動が不可能 | ディーラーへ連絡 |
THS-2方式以外 | 特になし | ハイブリッドシステムを始動する |
終わりに
ハイブリッド車でもバッテリー上がりが起こると聞いて驚かれる方も少なくないかもしれないが、駆動用バッテリーが空になることはかなり厄介である。
これを避けるためにも、少なくとも1ヶ月に1度は車を動かすようにしよう。
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