ガソリンを運搬・保管する場合に灯油用のポリタンクを使用することは厳禁だが、軽油を扱う場合も同じ条件なのだろうか。
今回は、“消防法”の内容を踏まえながら軽油の保管・運搬方法を解説する。
はじめに
はじめにガソリンの取り扱いを確認しておきたいが、危険物であるガソリンを保管・運搬するには消防法で定められた基準に適合する容器を用いなければならない(消防法第16条)。
危険物の運搬は、その容器、積載方法及び運搬方法について政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
消防法第16条より
ここで言う基準に適合する容器とは、“堅固で容易に破損する恐れがなく、その口から収納された危険物がもれる恐れがないもの”と規定され、現実的には金属製のドラム缶とガソリン携行缶がこれに該当する(危険物の規制に関する規則第41条及び42条)。
一方、プラスチック容器の使用は危険で、特に灯油用ポリタンクについてはガソリンの成分によりタンクが変形してガソリンが流出したり、気化したガソリンが漏れることで火災に発展する危険性もあるため、厳禁である。
軽油を入れる容器
軽油もガソリンと同じ危険物であるが、その危険性はガソリンよりも低く、“第4類危険物”の中の“第2石油類”に分類される(ガソリンは第1石油類)。
軽油の運搬・保管に使うことができる容器は、①ドラム缶、②金属製の容器(ガソリン缶)、③プラスチック製容器の3つであり、ガソリンと違いプラスチック製の容器を使用できることがポイントだ(危険物の規制に関する規則第41条及び第42条、別表第3の2)。
プラスチック製の容器は、例によって消防法で定める基準を満たすことが使用の条件となるが、“軽油用ポリタンク”として製造販売されているものであれば問題ない。
使用可能な容器 | 最大容積(L) | 備考 | |
ガソリン | ドラム缶 | 250 | |
ガソリン携行缶 | 60 | 乗用車で運搬する場合は22L以下の容器 | |
軽油 | ドラム缶 | 250 | |
ガソリン携行缶 | 60 | ||
軽油用ポリタンク | 30 |
ただし、ガソリン同様に灯油用ポリタンクを使用することは不可能なので注意が必要である。
軽油用ポリタンクの入手方法
燃料を入れることができると聞くと何か特殊な容器であるような印象が強い軽油用ポリタンクだが、ホームセンター等で普通に売られている(価格は1,500~2,000円程度)。
商品名は、“軽油用ポリ缶”、“ポリ軽油缶”、“軽油缶(ポリ)”などの場合が多く、タンクの色は緑色、容量は20Lのものが多い。
緑色が採用される背景には灯油用ポリタンク(赤色)との差別化を図る目的があると思われるが、これについては確かに合理的な試みと言えると思う。
保管方法
軽油の運搬・保管のいずれにも基準を満たす容器を使用しなければならないが、容器の適合については前述の通り。
何度も言うように灯油用ポリタンクの使用は厳禁だし、軽油用のポリタンクを使用する場合にも容量が30Lを超えてはならないので、この点にも一定の注意が必要だ。
さらに、ガソリンを保管する場合同様に“指定数量の倍数”による制約を受けることになるが、詳細を以下で解説する。
指定数量
軽油も危険物であり、これを保管する場合はガソリンと同様に“指定数量の倍数”に従い様々な制約を受けることになる(指定数量の倍数の計算式は以下に記載)。
指定数量はその危険物の危険の度合いにより決められる数値のことで、指定数量の倍数(指定数量に対してどれくらいの量を保管するか)によって保管方法に制約が加わる仕組みだ。
例えば、軽油の指定数量は1,000Lであり、指定数量の倍数がその1/5未満(=保管する量が200L未満)であれば特に制約はなし。
指定数量の倍数が1/5以上~1未満(=保管量が200L以上1,000L未満)の場合は火災予防条例の規制を受けることになり、保管場所の壁や柱などが不燃材料であることが条件とされる。
さらに指定数量の倍数が1以上(=保管量が1,000L以上)になると消防法による規制を受け、保管場所の柱や壁、床が耐火構造であること等が義務付けられるが、詳細は下の表を参照されたい。
指定数量の倍数 | 保管する量 | 規制内容 | 根拠 |
1/5未満 | 200L未満 | 特になし | なし |
1/5以上1未満 | 200L以上1,000L未満 | 保管場所の壁、柱、床、天井が不燃材質であること等 | 火災防止条例 |
1以上 | 1,000L以上 | 保管場所の壁、柱、床が耐火構造であること等 | 消防法 |
運搬方法
軽油の運搬に政令で定める基準を満たす容器を用いなければならないことは前述の通りだが、指定数量(1,000L)以上を運搬する場合には車両の前後に“危”の標識を掲示し消火設備を備える等の措置が必要となる。
“危”の標識は大きさが30センチ四方、黒地に黄色の文字であることが条件で、こちらも確認が必要な重要事項だ。
もちろん、容器のキャップをしっかり閉める、安全運転を心掛けるなど、当たり前に行うべき安全対策を確実に実行することも大切である。
終わりに
今回は軽油の保管・運搬方法を解説してきたが、最大のポイントはガソリンとは異なりプラスチック製の容器を使用できる点にあると言える。
しかし、あくまでも基準を満たす容器の使用が条件であり、“灯油用のポリタンク”を使うことは厳禁なので十分に注意しよう。
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