最近、当たり前のように車道や路側帯の右側を走行する自転車を見かける機会が多いのだが、立派な交通違反であることをご存知ないのだろうか。
今回は、この自転車の右側通行の禁止と正しい通行方法を解説する。
はじめに
路側帯とは
路側帯は歩道が設けられない道路における歩行者の通行場所であり、車道外側線の左側の帯状の部分を言う(“道路交通法第2条第3号の4”)。
法的には、道路交通法第2条第3号の4”にて“歩行者の通行の用に供する部分”と定義付けられ、自動車の通行が禁止される一方、軽車両である自転車の通行は許可される。
自転車が通行できる場所
自転車が通行できる場所は、原則として①車道、②路側帯、③自転車歩行者道、④自転車道、⑤自転車専用通行帯(自転車レーン)の5つである。
自転車も車両(軽車両)であるから車道通行が原則であるが、自転車道並びに自転車レーンが設けられる道路においては当該部分の通行が義務付けられる他、路側帯及び自転車歩行者道の通行も可能だ。
ただし、路側帯と自転車歩行者道においては歩行者の通行が優先されるため、自転車は歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。
- 車道
- 路側帯
- 自転車専用通行帯(自転車レーン)
- 自転車道
- 自転車歩行者道
右側通行の禁止
進行方向に向かって右側の①車道、②路側帯、③自転車専用通行帯を通行する行為は交通違反であるが、以下で詳細を順に解説する。
路側帯
軽車両(自転車)の路側帯通行は合法であるものの、車道と同様に進行方向に向かって左側の路側帯を通行しなければならない。
進行方向に向かって右側の路側帯を通行することは許されず、違反した場合には通行区分違反に問われるので十分に注意が必要だ。
仮に進行方向に向かって右側の路側帯を通行するとなれば、そのすぐ隣正面から自動車が向かってくるわけだから危険極まりなく、安全性の観点からも厳禁である。
自転車レーン
自転車専用通行帯(自転車レーン)が設けられる道路において、自転車は当該部分を通行する義務を負うが、例によって通行可能なのは進行方向に対して左側の自転車レーンのみ。
右側の自転車レーンを通行する行為は交通違反であり、反則行為名は通行区分違反である。
車道
進行方向に向かって右側の車道を通行することは言うまでもなく交通違反であり、絶対に許されない危険な行為である。
いわゆる“完全な逆走状態”であり、一歩間違えば大惨事に直結する愚行なのだが、特にお年寄りの中には平然と車道を逆走する方も少なくないので、自動車の運転者は彼らの存在に最深の注意を払わなければならない。
罰則
ここまで述べて来た通り、自転車で進行方向右側の車道、路側帯、自転車専用通行帯を走行する行為は交通違反であり、反則行為名はいずれも“通行区分違反”である。
その罰則は“3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金”だが、自動車と違って自転車には反則金が適用されず、法理論上は警察官に違反を目撃されれば即検挙され、刑事責任を追及されることになるので、自動車以上に的確な運転が求められると言ってよいだろう。
なお、右側通行とは別に、自転車専用通行帯(自転車レーン)が設けられているにも関わらずそれ以外の通行帯を走行した場合には“通行帯違反”に問われるので、こちらも注意が必要だ。
例外
以上の様に、自転車が進行方向に向かって右側を通行する行為は原則として交通違反であるが、例外も存在する。
具体的には、①自転車歩行者道と②自転車道を通行する場合がこれに当たるが、詳細は以下をお読み頂きたい。
自転車道
車道が区画され自動車道が設けられている道路において自転車は当該部分を通行しなければならないが、路側帯や自転車レーンとは異なり、進行方向に向かって右側の自転車道も通行することができる。
自転車道の内部には原則として中央線が設けられ、片側1車線の道路と同じ構造を持つため、その左側の部分を通行すればよい。
ただし、道路標識等によって自転車道が一方通行であることが示されている場合はそれに従う必要があり、実際には自転車レーンや路側帯通行時と同様に進行方向左側の自転車道の通行のみが許されると考えてよいだろう。
ちなみに、①車道の隣に自転車道が設けられているにも関わらずその内部を通行しない行為、②自転車道内部の右側を通行する行為、③一方通行が指定されている自転車道を逆走する行為はいずれも交通違反であるが、反則行為名は①②が通行区分違反、③は通行禁止違反である。
自転車歩行者道
自転車の通行が許可される歩道を“自転車歩行者道”と呼ぶが、自転車道同様に進行方向に向かって右側にある自転車歩行者道、左側にある自転車歩行者道のいずれをも通行可能である。
ただし、自転車歩行者道の内部は2つに区画され、自転車は車道寄りの部分を通行しなければならないので注意が必要だ(歩行者は道端寄りの部分を通行)。
また、言い換えれば自転車歩行者道の車道寄りの部分を双方向に向かって自転車が通行するわけだから、自転車同士の正面衝突を起こさないよう努める必要があるし、歩行者の通行妨害は言うまでもなく厳禁である。
まとめ
最後に話をまとめると、自転車の右側通行は原則として交通違反であるが、自転車歩行者道と自転車道を通行する場合のみ進行方向に向かって右側を通行することができる。
ただし、自転車道と自転車歩行者道を通行する場合はその内部の交通規則に違反しないように注意しなければならないし、都市部を除いてこれらが設けられる道路は少ないので、基本的にはやはり自転車の右側通行は許されないと考えてよいだろう。
進行方向に向かって左側のみ通行可能 | 車道、路側帯、自転車専用通行帯(自転車レーン) |
進行方向に向かって右側、左側の両方を通行可能 | 自転車道、自転車歩行者道 |
終わりに
原則として、自転車の右側通行が交通違反であることをご確認いただけただろうか。
例外こそあるものの、“逆走”によって深刻な事態を招く恐れがあることを理解し、進行方向に向かって左側走行を徹底したいところである。
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