私たちは、自動車に係わる様々な種類の税金を負担しているが、ある制度により本来の税額よりも多くの税金を支払っていることをご存知だろうか。
今回は、その”暫定税率”と自動車に係わる税の関係について投稿する。
はじめに
まずは、自動車には多くの税金が課せられていることを確認しなければならないが、その数は何と9種類にもなる。
その中でも、①揮発油税、②地方揮発油税、③軽油取引税、④自動車取得税、⑤自動車重量税の5つに暫定税率が適用されているのだ。
自動車に係わる税金についての詳細は、以下のページで確認して欲しい。
暫定税率
ガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)はじめ、自動車を取得・維持するにあたり、私たちが多くの税金を納めていることは、すでに述べた通り。
ところが、実際には、それらの税ごとに定められた本来の納税額(本則税率)よりも大きな税額が、私たちに課せられているのだ。
この、本則税率に上乗せ分が加えられたものが、“暫定税率”である。
揮発油税のように暫定税率の額が本則税率の2倍に達するケースもあるのだが、その根拠は、“急務である道路整備のための財源の不足に対応するため”らしい。
急を要する財源確保のための”暫定的な措置”として1974年に導入された暫定税率が、再三にわたり延長され、現在にまで至っているという経緯には驚くばかりだ。
税額
対象となる各税の本則税率と暫定税率の額をまとめたものが以下の表だ。
揮発油税と自動車重量税については本則税率の2倍、軽油取引税ではそれ以上の額が暫定税率として徴収されていることがわかる。
自動車重量税は、2010年4月1日以降上、乗せ分が少なくなり負担額が軽減された。
また、自動車取得税については、2014年4月1日の消費増税(5%→8%)に伴い上乗せ分がなくなったので、暫定税率が適用されなくなったと考えてよいだろう。
さらに、消費税が10%へ引き上げられると同時に、自動車取得税自体が廃止されることが決定している。
本則税率 | 上乗せ分 | 暫定税率 | ||
揮発油税 | 24.3円/L | 24.3円.L | 48.6円/L | |
地方揮発油税 | 4.4円/L | 0.8円/L | 5.2円/L | |
経由取引税 | 15.0円/L | 17.1円/L | 32.1円/L | |
自動車重量税 | ~2010年3月31日 | 2,500円/0.5t | 3,800円/0.5t | 6,300円/0.5t |
2010年4月1日~ | 2,500円/0.5t | 2,500円/0.5t | 5,000円/0.5t | |
自動車取得税 | ~2014年3月31日 | 取得価額×3% | 取得価額×2% | 取得価額×5% |
2014年4月1日~ | 取得価額×3% | なし | 取得価額×3% |
廃止
驚かれる方も少なくないと思うが、正確に言えば、暫定税率はすでに廃止されている。
民主党政権時代の2010年に、その根拠となる“租税特別措置法”が改正され、暫定税率は廃止されたのだ。
これは、”5年間の特別措置として1974年に導入された暫定税率が約35年間も延長され続けていることはおかしい”と主張してきた彼らの理念に沿った政策であったと言えるだろう。
ところが、そこで話は終わらずに、思いもよらぬ方向へ進んでいくのだ・・・。
当分の間の税率
2010年の租税特別措置法の改正により暫定税率が廃止されたことは事実だが、税額はそのまま据え置きとなった。
“当分の間の税率”という新たな名称のもと、暫定税率は引き継がれたのである。
その理由は、“急激な税収の落ち込みにより、財政が非常に厳しい状況にあることから、当分の間、現在の税制水準を維持する”というものであった。
役人の決まり文句とも言える言い回しだが、あれほど暫定税率の廃止を叫んできた民主党の理念はどうなったのだろうか・・・。
簡単に言えば、“名前が変わっただけで中身はそのまま”と言うことだったのだ。
しかも、この当分の間の税率には期限が設けられなず、事実上、“恒久化”されてしまったことも見逃すことはできない。
それまで、暫定税率は“あくまでも5年間の暫定的な措置”とされ、5年毎に延長手続きが取られてきたのだが、そのようなことは一切必要なくなったのである。
声高に暫定税率の廃止を主張してきた民主党が、廃止するどころか、それをより強固なものにしたと言うのだから、理解し難いことこの上ない・・・。
このような理由で、私たちは現在も、本則税率の2倍もの額の税金を負担し続けているのだ。
問題点
道路整備の必要性
第一に、ガソリン税をはじめとする自動車の取得や維持に係わる税金が、“道路特定財源”として運用されてきたことを忘れてはならない。
道路特定財源とはその名の通り道路整備のための財源だが、“早急に道路を整備する必要性”のもとで運用され、更には暫定税率が導入された経緯があるのだ。
確かに、1960~70年代には道路整備の必要性は高かったかもしれないが、そこから30年以上が経過した現在、同じ状況が継続しているのかと言えばそうではないだろう。
“必要ない道路をつくることで税金の無駄使いをし、一部の土建業を潤わせているだけ”と言われても仕方がないのではないだろうか。
道路特定財源の一般財源化
道路特定財源財源は“目的税”であり、使用用途が道路整備に限られることは言うまでもない。
ところが、民主党政権時代の2009年に道路特定財源は廃止され、“一般財源化”されてしまったのだ。
これにより、揮発油税はじめ自動車の取得や維持のために我々が負担している税金が、道路整備以外の目的で使用されることが可能になったのである。
自動車に係わる税金が、自動車にとって必要不可欠な道路整備に利用されるのであれば納得できなくもないが、その他用途に使われるのは承服し難い。
自動車を所有している人のみが多くの税金を支払うことに大きな疑問が生じることは当然であり、それらの税金が存在する根拠自体が疑われていると言っても間違いではないのだ。
このような中で、当分の間の税率(暫定税率)として本来よりもはるかに多い税額を負担しているのが、現在の状況なのである。
終わりに
我々が負担している自動車に係わる税金さらには暫定税率について、十分に理解している人は決して多くないと思うが、それらが多くの問題を含んでいることは事実だ。
これらのことが多くの国民の知るところとなれば、国民的大議論が起こってもおかしくない話だと思う。
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