運転中に止むを得ず急ブレーキをかけてしまうこともあり得るが、これが交通違反に問われる可能性があることをご存知だろうか。
今回はこの急ブレーキ違反と追突事故に発展した場合の過失割合について投稿するので、ぜひ最後までお読みいただきたいと思う。
急ブレーキの定義
一言で急ブレーキと言ってもどの程度強くブレーキをかけたらこれに該当するのかが気になるところだが、実際に交通事故が起きた時のために明確にしておくべきポイントでもある。
そこで早速調べてみると、“ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)”の動作の有無が1つの判断基準になるらしい。
ABSとは強くブレーキをかけた場合にタイヤがロックしないように制御してくれるシステムで最近の自動車にはほぼ間違いなく搭載される機能であるが、これが作動したことが明らかになれば、運転者が急ブレーキをかけたと判断される確率が高いと考えてよいだろう。
交通違反
走行中の急ブレーキが交通違反に問われるケースもある。
これを聞いて驚かれる方も少なくないと思うが、以下にその根拠となる“道路交通法第24条”を載せたので是非目を通していただきたい。
(急ブレーキの禁止)
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
道路交通法第24条より
同条文では危険を回避するためにやむを得ない場合を除いて急ブレーキを踏んではいけないことが規定されており、これに違反した場合は“急ブレーキ禁止違反”に問われるのだ。
なお、罰則等の処分については下の表にある通り。
反則行為 | 行政処分 | 刑事処分 | ||||
点数 | 反則金(円) | 罰則 | ||||
大型 | 普通 | 2輪 | 原付 | |||
急ブレーキ禁止違反 | 2点 | 9,000 | 7,000 | 6,000 | 5,000 | 3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金 |
違反になる可能性
この急ブレーキ違反に該当するか否かを判断する上では、“危険を回避するためにやむを得ない場合を除き”との文言が最大のポイントになる。
非常に抽象的な表現であり、いかなる行為についても“危険を回避するため”と主張すればそれで済んでしまうような気もするが、“新車のブレーキ性能を試してみた”とか、“アイスバーンでブレーキを踏んだらどうなるかを実験してみた”などの理由で急ブレーキをかけることに正当性がないことは明らかだ。
また、“煽り運転”を仕掛ける後続車両に対する対抗措置として急ブレーキを踏んだ場合なども確実に違反に問われると思われるが、こちらについては危険運転致死傷罪に問われる可能性もある極めて危険な行為であるだけに、絶対に行わないようにしていただきたい。
過失割合
急ブレーキが原因で追突事故に発展した場合、その過失割合がどのようになるのかも非常に気になるところだが、意外にも追突した側の過失が大きくなる傾向にある。
例えば、“前を走行していた車Aが急ブレーキをかけたため後続車両Bに衝突されたケース”でのA車とB車間の過失割合は、“20:80”になるとのこと。
事故がA車の急なブレーキ操作に起因することは事実であるものの、それ以上に、B車がA車との間の十分な車間距離の確保を怠ったことに対する責任が追求されるのだ。
B車が気の毒なようにも思えるが、“道路交通法第26条”で追突事故を起こさないための十分な車間距離を確保することが義務付けられている以上、致し方ないだろう。
(車間距離の保持)
車両等は同一の進路を走行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
道路交通法第26条より
もちろん、両車が動いている状況での事故においては過失割合が10:0になることはなく、いずれも一定の過失の追求を免れることはできない。
このことからも、事故になれば皆が後味の悪い思いをすることは明らかであり、十分な車間距離確保の重要性を再確認するところである。
悪質なケース
追突した後続車両の過失が大きくなる原則があるとは言え、その事故が悪質なブレーキ操作によると判断された場合は事情が異なる。
先述の様に、その必要性が全くないにも関わらず急ブレーキを踏んだとなれば先行車両の過失割合が大きくなるだろうし、中でも後続車両の通行をわざと妨害する目的で急ブレーキを踏む行為などは言語道断。
危険極まりない行為であり、これが原因で人身事故に発展した場合には“危険運転致死傷罪”が適用される可能性も十分にあることをご理解いいただきたいと思う。
終わりに
急ブレーキと交通違反の関係、並びに急ブレーキが原因で追突事故に発展した場合の過失割合についてご理解いただけただろうか。
事故になればお互いが嫌な思いをすることは確実であるから、常に安全運転を心がけ、余裕を持ったブレーキングを行うことが何よりも大切なのだ。
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