ガソリンモデルとディーゼルモデルのいずれも高い評価を受けているマツダのデミオだが、どちらを購入するかお悩みの方も多いと聞く。
私はガソリンモデルを所有しており、ディーゼル車にも何度も試乗しているが、今回は両者を比較してみるので、ぜひ最後までお読みいただきたいと思う。
走行性能
加速
まずは加速についてだが、間違いなくディーゼルモデルの方がよい。
ターボがかかるまでのわずかなタイムラグこそあるものの、“最大250N・m”の圧倒的なトルクによる怒涛の加速は、ガソリンモデルでは実現不可能だ。
アクセル全開とは言わなくても、キックダウンスイッチが作動する程度に踏み込むと、背中がシートに押し付けられるような凄まじい加速をする。
なお、ターボラグについては随時改良がなされているので、現在販売されているモデルではほとんど気にならないと考えてよいと思う。
一方のガソリンモデルも、ディーゼルモデルのような圧倒的な力強さはないものの、特に不満を感じることはない。
アクセルコントロールについてはむしろディーゼルモデルよりも自然に行うことができるので、一般道を走行する上ではこちらの方が扱いやすいと思われる。
一般道走行
一般道を走行する上では、ガソリンモデルでも全く不満はない。
日本の一般道における最高速度は60km/hであることを考えても、1.3Lガソリンモデルで必要にして十分と言える。
絶対的な動力性能では劣るものの、ガソリンモデルの方がアクセルコントロールを正確に行うことができ、より扱いやすいことも高く評価できるポイントだ。
山道やワインディングが連続する道路を走行する場面であればディーゼルモデルが有利だろうが、普段使いでそのような機会は決して多くないはず。
仮に峠道を走行する場合にも、“スポーツモード”を有効に活用することでガソリンモデルでも十分軽快に走破可能なので、パワー不足を極端に心配する必要もないと思う。
高速道路走行
高速道路走行においてはやはりディーゼル車に軍配が上がるが、その圧倒的なトルクの恩恵を受け、追い越し車線に入っても安心して運転することができる。
1.3Lの自然吸気エンジンを搭載するガソリンモデルに対し、ディーゼルモデルに搭載されるのは、1.5Lのターボエンジン。
排気量の差もあるが、それ以上にターボモデルであることが大きく、時速100km/hでの走行となれば、その余裕の差は歴然としている。
ガソリン車の場合、100km/巡航時のエンジン回転数が2,000~2,100回転あたりまで上昇するが、ディーゼルモデルでは”1600〜1700回転ほど。
エンジンを回す必要がないから線粛清も高く、燃費の向上も期待できる。
時速100km/hでの走行となるとガソリン車では燃費が悪化するが、ディーゼルエンジンにと最も効率のよい領域であり、25km/Lを上回る数字を記録することも可能だ。
車体安定性でガソリンモデルを上回ることも重要なポイントだが、搭載されるエンジンが大きく、ガソリン車よりも約100kg車重が重いことによる影響が大きいと思われる。
静粛性
静粛性では、やはりガソリンモデルが優れている。
両モデルとも加速時にはエンジン音が車内へ入ってくるが、そのサウンド自体は決して悪くないし、停車中はアイドリングストップするのでとても静かだ。
しかしながら、ディーゼル者の場合、アイドリングストップからエンジンが再始動した時にはやはりディーゼルエンジン独特のガラガラ音が聞こえてくる。
随時防音対策の改良が行われているとは言え、人によっては耳障りに思えてしまうだろうから、これが気になる場合にはガソリンモデルを選択するのもよいと思う。
もちろん、エンジンノイズが気になるのはこのアイドリングストップからのエンジン再始動時に限ったことであり、加速した後の静粛性は申し分ない。
従来のディーゼルエンジンと比較すればその差は歴然だし、車に詳しくない人がガソリン車と間違えても不思議でないレベルである。
ハンドリング
ステアリングを切った時の鼻先の反応はガソリン車の方が良い。
一方のディーゼルモデルはエンジンが大きいためフロントが重く、ステアリングを切った時の反応はガソリンよりも若干鈍いような印象を受ける。
しかし、そちらの方が安定感があってよいと思う人もいるようだし、こればかりは好みの問題になってくるかもしれない。
いずれにせよ、両モデルとも他社のコンパクトカーよりもはるかに上質なハンドリングを実現していることに間違いないので、それほど気にする必要もないと思う。
運転の楽しさ
両モデルともに本当に運転が楽しい車だが、より軽快な走りを好む方にはガソリン車をお勧めしたい。
また、この1.3LガソリンエンジンはMT(マニュアルトランスミッション)との相性もよく、積極的にエンジンを回して走るのに最適な車でもある。
一方、重厚な乗り味を好む方やゆったり走ることが好きな方にとっては、ディーゼルモデルの方がしっくりくると思う。
安心感
運転中の安心感ではディーゼルモデルに軍配が上がるが、既に述べた通り、車重が重い分車の挙動が安定している。
ガソリンモデル車は、路面状況が悪い箇所を通過した時に若干車が跳ねるように感じられることもあるが、車重が重いディーゼル車ではそれも軽減されるはずだ。
高速走行時にドライバーが感じる安心感も、間違いなくガソリンモデルを上回る。
燃費
燃費に関してはディーゼルモデルの勝ちだ。
メーカー公表値は、ガソリンモデルが“24.6km/L”、ディーゼルモデルが“26.4km/L”だが、私が調査した実燃費は以下の通り。
モデル | メーカー公表燃費 | 実燃費(km/L) | ||||
街乗り | 渋滞時 | 遠出 | 高速道路(時速100km/h) | |||
昼間 | 夜間 | |||||
ガソリンモデル(AT/FF) | 24.6km/L | 15~16 | 19~21 | 11~12 | 24~26 | 21~22 |
ディーゼルモデル(AT/FF) | 26.4km/L | 17~18 | 21~23 | 13~14 | 26~30 | 24~26 |
特に、長距離移動になればなるほどディーゼル車の燃費の良さが際立つが、ガソリン車の燃費性能も十分に優秀である。
コストパフォーマンス
結論から言えば、“ガソリンモデルの方がコストパフォーマンスが高い”と言えるが、以下にその理由を述べる。
価格
モデル名 | 価格(税込) | モデル名 | 価格(税込) | ||
ガソリン(AT/FF) | 13c | 1,350,000円 | ディーゼル(AT/FF) | ||
13s | 1,458,000円 | XD | 1,782,000円 | ||
13s touring | 1,684,800円 | XD touring | 1,965,000円 | ||
13s touring L package | 1,738,800円 | XD touring L package | 2,019,600円 |
上の表は、ガソリン車とディーゼル車の価格を各グレードごとにまとめたものである。
ガソリンモデルの13Cに関しては装備等も最小限で企業向けの要素が強いことから、実際には13Sがベーシックモデルと考えてよい。
その13Sをディーゼル車の基本グレードであるXDと比較すると、その価格差は33万円だ。
燃料代の比較
ディーゼルモデルの燃費のよさが強調されているが、1.3Lガソリンモデルの燃費も非常に優秀で、実はその差は少ない。
下の表は両モデルの走行距離1kmにつき必要な燃料代を比較したものであるが、より現実的な数値に近つけるため、燃費の数字にはメーカー公表値の7割の値を採用している。
モデル | 燃費(km/L) | 燃料代 | ||
メーカー公表値 | 実燃費(公表値の7割) | (走行距離1kmあたり) | (走行距離1万kmあたり) | |
ガソリン | 24.6 | 17.2 | 7円 | 70,000円 |
ディーゼル | 26.4 | 18.5 | 5.6円 | 56,000円 |
また、ガソリン代は120円/Lと仮定し、軽油はその2割ほど安い100円/Lに設定。
以上の条件で計算すると、走行距離1kmあたりの燃料代はガソリンモデルが7円でディーゼルモデルが5.6円。
走行距離10,000kmあたりの燃料代は、ガソリンモデルが70,000円でディーゼルモデルが56,000円でディーゼル車の方が安いが、その差はわずか14,000円。
これをもとに年間1万km走行する人が車両の価格差30万円を回収するのに必要な時間を計算すると、何と21年もかかることに・・・。
年間5万キロ走行する人で、その差額を消化するのに4年半と言ったところか。
これを言い換えれば、年間1万km走行する人が購入価格の差額約30万円を取り戻すためには21万kmの距離数を走らなければならないわけで、現実的な話とは言えないだろう。
以上のことからも、燃料代の安さと燃費性能の良さで車両価格の差額を回収することは難しく、ガソリンモデルの方がコストパフォーマンスに優れると言う結論に達するのである。
終わりに
今回は、ガソリンとディーゼルの2つのデミオを比較してきたが、デミオの購入を検討されている方にとって少しでも参考になれば嬉しい限りだ。
両モデルともに素晴らしい車であることに間違いはないが、納得できるまで試乗され、後悔のない選択をしていただきたいと思う。
コメント
興味深い比較記事です。
楽しく読ませていただきました。
現在2.0Lガソリンのアクセラ(スカイアクティブ)に乗っていますが、
最近の使用用途や環境から、小さなデミオに関心があります。
自分の場合、ディーゼルがいいのかガソリンがいいのか、情報を探している中で記事を読ませていただきました。
宣伝的な記事では現状は分りにくいですが、貴記事はリアルな情報で参考になります。
気になる部分がありました。↓
「運転の楽しさ」の部分ですが、
(以下引用)
“この1.5Lガソリンエンジンは、MTとの相性もよく、積極的にエンジンを回して走るには最適・・・”
となっています。
1.3Lガソリンでは?(もしくは1.5Lディーゼル?)
コメントありがとうございます。
はじめに、排気量の記載に誤りがございましたことを訂正させていただきます。ご指摘いただきました通り、正しくは1.3Lでございます。お知らせいただきありがとうございました。
デミオの購入を検討されているとのことでございますが、ガソリン、ディーゼルともに素晴らしい車に仕上がっておりますが、特徴や個性は異なるため、最終的には使用用途や実際に試乗された印象が大切だと思います。
ガソリン車は発売開始時に既にある程度完成された感があり、改良を受けて大きく変化を感じることはございませんが、ディーゼルモデルはまだまだ改良の余地があり、静粛性の向上など随時進化しています。この記事における私の経験を超える要素もあると思いますので、何度か試乗され、乗り比べられるることをお勧めいたします。
最近のマツダの姿勢からして、購入を前提としていれば、多めに試乗させてくれるように頼んでも対応してくれすはずです。
ディーゼル車が話題になる一方ガソリン車の出来もかなり良いことをお伝えしたかったこともあり、この記事を作成させていただきました。ぜひ、ガソリンモデルにも試乗されて下さい。