トンネル内を走行中、当たり前の様に無灯火で通行する車両を見かけることがあるが、これは交通違反ではないのだろうか。
疑問に思い調べて見ると意外な事実が明らかになったので、早速投稿したい。
灯火の義務
まずは車両等の灯火について規定する“道路交通法第52条第1項”を確認したいが、以下にその条文を載せた。
(車両等の灯火)
車両等は夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあっても、同様とする。
道路交通法第52条第1項より
あえて説明するまでもなく、夜間における灯火義務が規定されていることをご理解いただけると思うが、特に注目すべきは条文下段である。
“政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあっても、同様とする”との文言の中にあるこの“政令”こそがトンネル内での灯火義務の有無を知るための鍵になるはずだ。
なお、灯火の義務に違反した場合は“無灯火違反”に問われるが、罰則等の処分は下の表にまとめた通りである。
反則金 | 行政処分 | 刑事処分 | ||||
点数 | 反則金(円) | 罰則 | ||||
大型 | 普通 | 2輪 | 原付 | |||
無灯火違反 | 1点 | 7,000 | 6,000 | 6,000 | 5,000 | 5万円以下の罰金 |
トンネル内での灯火
道路交通法第52条第1項下段にある“政令”とは、“道路交通法施行令第19条”のことを言う。
ここで定められる状況においては、夜間以外の時間帯であってもライトを点灯させなければならないわけだが、下にその条文を載せたのでご確認いただきたい。
(夜間以外の時間で灯火をつけなければならない場合)
法第52条第1項後段の政令で定める場合は、トンネルの中、濃霧がかかっている場所その他場所で、視界が高速自動車国道及び自動車専用道路においては200メートル、その他道路においては50メートル以下であるような暗い場所を通行する場合及び当該場所に停車し、又は駐車している場合とする。
道路交通法施行令第19条より
これによれば、トンネル内及び濃霧がかかっている場所において、一般道は視界が50メートル以下、高速道では200メートル以下の場合に灯火の義務があるとのこと。
逆を言えば、例えトンネル内であっても高速道路と自動車専用道路においては200メートル、その他の道路では50メートル先まで視界が確保されている状況であればヘッドライトの点灯が不要であることがわかる。
トンネル内での灯火が絶対ではないことには驚かされるが、画像の様にトンネル内部に太陽光が差し込む構造であれば視界も良く、確かにライトは必要ないかもしれない。
しかしながら、実際に何メートル先までの視界が確保されているのかを正確に判断することは容易ではないため、よほど明るいトンネルでもない限りヘッドライトを点けておくのが無難なのではないだろうか。
- 高速道路、自動車専用道路:200m先までの視界が確保できない場合
- 一般道:50m先までの視界が確保できない場合
取り締まり状況
トンネル内の無灯火通行に対する取り締まりの状況も気になるところだが、やはり検挙事例も存在する。
その一方、完全に無灯火でトンネル内を通行している車両を当たり前の様に見逃している警察車両も…。
200メートルあるいは50メートル先までの視界の確保されているかどうか正確な判断が難しいことが影響していることもあるだろうが、実際に検挙されるかどうかは現場の警察官の裁量によるところが大きいようにも思える。
ちなみに私の近所のトンネルの場合、20年ほど前は頻繁に無灯火違反の取り締まりが行われていたものの、最近では全くその様子を見かけることがない。
終わりに
トンネル内での灯火が必ずしも必要ではないことをご理解いただけただろうか。
しかしながら、灯火の必要性の有無の判断が容易でないことからも、個人的にはヘッドライトを点灯させるのがベターであると思う。
コメント
こんにちは、初めまして。
法令による条文がよく分かり参考になりました。ありがとうございます。
運転する者が個々の判断でトンネル内でライトの電灯するかしないかに任されているんですね。
法律は曖昧さを残しているんですね。
余談ですが前消灯の基準と一緒で淡い黄色。
自分自身の車両に気付かせるためもあり、安全面から私はトンネル内はライトを点けていますよ。
こんにちは。記事の内道交法施行令の引用部分のうち「その他場所で、」とありますが、正しくは「その他の場所で、」となりますので、お伝えします。
みるな様、コメントありがとうございます。そうでしたか… 当方の引用ミスと思いますが、ご指摘ありがとうございます。