下り坂では、フットブレーキへの負担を軽減するためにエンジンブレーキを使用すべきとされているが、そのメカニズムが気になるところだ。
そこで今回は、エンジンブレーキの仕組みについて考えてみたいと思う。
変速機
車が動くためには車輪が回転しなければならないのだが、その動力源となるのがエンジンであることは皆が知るところだと思う。
エンジンで発生した動力が車輪を動かすための軸(ドライブシャフト)に伝わることでタイヤが回転するのだが、両者の間には変速機(トランスミッション)が存在する。
トランスミッションとは幾つかのギアとシャフトの組み合わせであり、エンジンの動力をドライブシャフトへ伝達するためには欠かすことができない重要な部分なのだ。
ここで言うギアは、歯車の形状をしている。
エンジンの動力を回転力に変えるための軸(クランクシャフト)とドライブシャフトが歯車を介してつながっていると考えて欲しい。
文字で説明することは難しいが、下の動画を見ていただければイメージしやすいと思う。
重要なのは、クランクシャフト側の歯車とドライブシャフト側の歯車が噛み合い、互いに動力の伝達が行われる関係にあることである。
車が動く場合は、エンジンの出力がクランクシャフトを動かし、その動力が歯車を介してドライブシャフトに伝わることで車輪が駆動するのだ。
これらのことを理解しておけばは、エンジンブレーキについて考える場合に有利になると考えて間違いないと思う。
歯車の大きさ
次に、ギアの大きさと回転数、力の関係を理解しておきたい。
トランスミッションには異なる大きさの歯車が存在し、いずれの中心にもドライブシャフトが通っている。
マニュアル車の場合、運転手がシフトレバーでギアを選択するが、どの歯車を動かすかを決定しているのだ。
ギアが低くなるにつれ使用する歯車の直径は大きくなり、1速が最も大きく、6速が最も小さくなる。
大きい歯車ほど強い力でドライブシャフトを回すことができるのだが、きつく締めてあるネジをレンチで回す場面をイメージして欲しい。
取っ手が長いレンチほど簡単にネジを回すことができるはずだ。
一方、大きな歯車が1周するには時間がかかり回転数が低くなるため、高速で走行することができないことが特徴である。
高速ギア(5~6速/歯車が小さい)がこれと逆の性質を持つことは、想像に難くないと思う。
停止状態の車を発進させる場面(最も大きな力が必要)で1速ギアを使い、高速巡航する場合に5速ないし6速ギアを用いる理由がここにあるのだ。
低速ギア(歯車が大きい) | 高速ギア(歯車が小さい) | |
特性 | ・力を伝えやすいが速く回転できない ・加速力はあるが速度は出ない ・発進時、急加速時に使用 | ・力はないがたくさん回転することができる ・加速力はないが速度は出せる ・加速後、巡航用に使われる |
エンジンブレーキ
仕組み
アクセルペダルから足を離すと速度が落ちていく現象がエンジンブレーキだが、そのメカニズムを知ることは容易ではないように思える。
しかしながら、変速機のところで説明した内容をご理解いただいていれば、答えは見えてくるはずだ。
最も重要なポイントは、クランクシャフトとドライブシャフトが歯車を介してつながっており、互いが互いに影響を与える関係にあることである。
ドライブシャフト、すなわち車輪は惰性で回転を続けようとするが、エンジンの出力がなくなるため、クランクシャフトが動かない。
両者は歯車を介してつながっているのだから、動こうとしないクランクシャフト側の歯車が、ドライブシャフトの回転にとって大きな抵抗となるのだ。
動こうとしないクランクシャフトが車輪の回転の邪魔をする格好になるのだが、これがエンジンブレーキの仕組みである。
ちなみに、エンジンブレーキが効いている時にエンジン回転数が上昇するが、これは、惰性で回転しようとするドライブシャフトの力でクランクシャフトが回転することが理由だ。
クランクシャフトとドライブシャフトが歯車を介してつながっていることを理解すれば、十分に納得できる話だと思う。
ギアごとの効果の違い
低速ギアほどエンジンブレーキの効きが強いと言われるが、すでにその理由を理解されている方も少なくないと思う。
変速機のところに貼り付けた動画をご覧いただければおわかりと思うが、低速ギアほど1周するのに時間がかかるのだから、回転数が落ちる。
よって、4速よりは3速、3速よりは2速ギアを用いた方がドライブシャフトの回転数が落ち、減速効果が高まることは当然のことなのだ。
さらに、半径が大きいギアほど力の伝わり方が大きいのだから、クランクシャフトからの抵抗の影響も強く受けると考えられる。
以上のことを踏まえれば、低速ギアほどエンジンブレーキの効果が強くなることも、納得いただけると思う。
終わりに
エンジンブレーキの基本的な仕組みについて言えば、以上のようになると思う。
これを適切に使うことができれば、ブレーキングをより円滑に行うことが可能なだけに、是非とも実践したいところだ。
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